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捏造する過去

姉と、私と、弟と。
それだけは確かだった。
それだけは。

15年ほど前の情景だった。
しかしそれは決して事実あった過去ではなく、私の脳内でだけ捏造された過去だった。

稲の苗床のようなものを、三人で見下ろしていた。
ひょろりと細く伸びたライトグリーンの芽は、それぞれまだ10cmにも満たない、か細いものたちばかり。
しかしその中から唯一、20cm近く伸びたものがあった。
それをいち早く発見した姉が、それを周囲の土ごとそっと取り上げた。
小さな両手に包まれた芽は確かに、稲などではなく。
無駄な枝葉もなく、細く滑らかな身をひょろりと真っ直ぐ空へ伸ばしていた。
きっと赤く美しい花を咲かせるのだと思った。
姉の両手の中、零れ落ちる土と、その指の隙間から見える根。
姉はそのまま何も言わず、その苗を持ってどこかへ行ってしまった。

その植物の名前は知らない。
だけど、赤く美しい花が咲くのだと確信していた。
そして、我々兄弟はどうしてもそれを咲かせなければ。と思っていた。
理由はわからない。
ただ、咲かせたいがために三人でここに探しに来たのだけはわかっていた。
姉はもういない。
私と弟はもう一度、苗床のようなものを見下ろした。
這い蹲って、10cmにも満たない苗たちを見た。
まだ、弱い。
もう少し成長しないと、姉のように土ごと掬って移植などできない。
か弱い苗に、移動に耐えられるほどの力はない。
だが、私と弟はどうしても苗を持ち帰りたかった。
姉のように。
伸びた苗を両手に持って帰りたかった。
二人、必死で苗床を見つめた。
どんなに探しても見つからないし、急激に苗が成長してくれるはずもないのに。

私たちは途方に暮れて立ち尽くした。

花は、咲かないのか。
私たちには、咲かせることができないのか。

赤くて、柔らかい花弁が幾重にも重なった美しい花は。

…あの花は、なんて名前だったのだろうか。
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