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影はいつも鮮やかな一色なのだ

いかないでいかないで。
僕が懇願すればするほど、影は遠のく。
いかないでどこにもいかないで僕を置いていかないで。
僕はひとり君を置いてふらふらと出かけるくせに、君がひとり僕を置いてふらふらと行ってしまうのはこんなにも怖い。

どこまでも自分勝手なのだ。
結局なんだかんだ言って、自分さえ良ければそれでいいのだ。
君が喜んでくれたら僕が嬉しいから。君が楽しんでくれたら僕が楽しいから。
君が悲しむと僕は悲しい。君が痛むと僕だって痛い。
結局僕は自分のために君を想う。
なのに僕はいつも、君を置いてふらりと歩き出してしまう。
そのたび君が、必死になって僕を探し出してくれてしまう。

そうか。僕は気づく。
だから今、僕の目の前、他の何も見えなくなるほどの鮮やかな色を纏った影は、僕から遠ざかろうとしているのか。

いかないでいかないで。
僕は大声を出して呼び止めようとして、声が出ないことに気づいた。
待って待って。
僕は必死で手を伸ばして君を捕まえようとして、足が動かないことにも気づいた。
その絶望感たるやない。

だけどそんなのまだマシだった。

引きつるほど精一杯伸ばした、…この指先がほんの僅かでも君に届くなら、その後千切れて落ちてしまってもいいと思うほど伸ばした指先の向こう。いつだって僕の目を、心を、全てを奪ってやまないその鮮やかな一色が、まるで海辺の砂の城のようにざらりと脆く崩れ落ちたのだ。

僕は悲鳴を上げた。
声なんて出なかったけれど、息もできなかったけれど、腹の底にありったけの力を込めて叫んだ。
言葉にもならない血を吐くような叫び。





(一旦停止)
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