FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

境界線

僕と君の間には、いつだってどうしたって越えられない境界線がある。
そんなこと、人として生まれ出でた瞬間から嫌というほど分かっていた。
この世に生まれる直前まで僕らは母体の中で母体と直結して生き、生まれた瞬間、母体と個体に別れてしまう。
晴れて個体となった僕らは、自分が生まれると同時に生じる他者との境界線を日々思い知りながら成長していくのだ。

境界線の最果てを探して生きるのだ。
果てなんてないのだけれど。

境界が生じることが全て悪いわけではない。
生まれた瞬間、個体となり他者と切り離されることに対して、不安と同時に喜びだって知った。
自我を持てるということ。他者と自分という立場で誰かに触れ合ったり関わり合ったりできるようになれたこと。
そうすることで、生きていけること。

だけど。
だけど、ねぇ、こんなにも思い知るなんて。
まだこの自覚を上回る知覚があるなんて。
僕は想像だにしたことなんてなかったよ。

こんな日なんて来なけりゃ良かったと心底歯がゆく思った。
だけど、それと同時に僕は、この日をこんなにも待ち侘びていたことを知った。

肉体という境界線があるお陰で僕は今、君の頬に手のひらを触れさせ、その温度差を知ることができる。
だけど、肉体という境界線があるせいで僕らは今、互いの内心を知ることもできず、互いに正しく知らせることもできずに途方に暮れる。

あぁ、どこまで行けば。どうすれば。
僕と君の間の境界線が、…完全になくなる場所なんてないけれど、それでも少しでも。ほんの少しでも薄れる瞬間までたどり着けるのだろう。

僕は、この両足で立つ。
君もまた、その両足で。

互いの正面に立ちながら、そしてこうして手のひらと頬とを触れ合わせることを望みながら、受け入れながら。
目と目を合わせる勇気もなくて、途方に暮れる。

「…分からないことが多すぎるんだ」

「そのことをお前が恐れるのか。らしくないな」

ふん、微かに鼻で笑う君が、僕の目線より僅か上で両目を細めた。
そうすることで、この至近距離でも僕と完全に目を合わせる危険を冒すことなく、僕を見やることができると知っているからだ。
臆病なのは僕より君だと僕は言いそうになって、…言ったところで何も変わらないと口を噤む。

「分からないことがあれば無理やりにでも。例えそれが知る必要のないものでも、知ることで自分の立ち位置を危うくするものでも知ろうとするのがお前じゃないのか」

だから今お前は俺の目の前にいるんじゃないのか。

君は今の僕にとって。このように途方に暮れるまでになってしまった僕にとって最も残酷な言葉を吐いて小さく笑った。
違う。なんて否定の言葉は、口にしたところで意味なんて成さない。
ここまで僕と君との間にある境界線を思い知った僕らには、もうどんな言葉だって無意味なんだ、きっと。

それでも。

「それでも僕は、僕として生まれ、生き、今ここでこうして君の目の前に立っていることを後悔したりなんかしない」

「……それでいいんじゃないのか。それがどれほどくだらなく、愚かな判断だったとしてもな」

お前がそれでいいのなら。
君は無感動を装って何もかもを僕に投げて寄越す。
ずる賢くて、臆病で、誰より優しい君はそうやって、僕から逃げる。僕を逃がす。
僕らの間に恐ろしいほど確実に存在する境界線を、僕と君とに思い知らせる。

あぁ、いつだってどうしたって。
僕がどれほど最果てを探しても、君が全てから目を逸らす。
そうすることで、僕を最果てから遠のかせ、君もまた思い知るのだ。
果てなんてないのだと。
だからこそ僕らはこうして、何度でも何度でも向かい合い続けるのだと。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。