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歌うように

まるで幼子のようね、おちびちゃん。
私は胸の奥深くが妙にくすぐったくて、ふ、ふふ、笑みを零し落としながら彼を見やる。
彼はどこか恨めしげにこちらを横目に睨み、唇の先を尖らせた。

するり、すり抜けるならそのままに。
だって僕にはそれを止め、無理やり引き戻すだけの長くたくましい腕も、掴む手のひらもない。
例えそれらがあったとしても、そうする権利の欠片もない。

あら。もう諦めたの。早いのね。
私は「仕方ない」なんて使い古された、全ての物事を一刀両断してしまう残酷な言葉を吐かずに済んだことに、内心少しだけほっとしながら笑った。
だけど彼はかぶりを振る。

そんなにすんなり諦められるものではない。
だけど、それ以外に方法がない場合、諦めがつくまでひたすら息を殺すしかないじゃないか。

「仕方ない。のだろう?」

ひゅ、

途端、か細く鳴った情けない喉は、私のと彼の両方だ。
彼の内側に凝っていたとてもとても寂しい何かが、彼の喉を鳴らし、私の喉を鳴らしたのだと思った。

両手を伸ばせば簡単に届く距離に彼の身体はあるのに、それでも私は両手を伸ばして彼を抱いてあげられなかった。
こんなにそばにあって、これほどまでに遠く離れることへの耐性がまだ私には備わっていなかったからだ。

まるで迷子のようね、私たち。
私は胸の奥深くが妙に痛くて、ふ、ふふ、笑みを零し落としながら彼から目を逸らした。
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