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雨音の中から見つけだそう

さぁさぁと雨が降り続いていたけれど、それが現実の雨音なのか、夢の中だけの幻聴なのかは判断できなかった。
ただ、この夢が覚めない限り、建物の外へ出るには傘が必要だということだけは分かった。

隠された大切なものを探さなくてはならなかった。
妬みとか僻みとか、そういった誰しも胸の内に抱いてしまうゆらゆらとした感情が大切なものを隠してしまったから、どうしたって見つけなければ帰れないと思った。
このまま、なくしたまま家路になんてつけないと思った。

騒がしい喧騒の中をすり抜けながら探し回った。
途方に暮れるほどの人いきれ。
不意に肩を叩き、二手に分かれよう、と自分の進む方向とは逆を指差したのは、誰だったか。

「あなたは関係ないのに一緒に探してくれるの」

「関係あるでしょう。それに見つからないと帰れないんでしょう」

誰かはにっこり微笑んで、自分はこっちを探すから、と言った。
するすると人ごみの中を上手にすり抜け駆けていく背中を見送りながら、ありがとうありがとうと心の中で呟いた。
ありがとうありがとう。あなたがそうやって一緒に探してくれるだけでなくしたものは慰められる。
あなたがそうやって一生懸命他人のことのために頑張ってくれるだけで、自分もきっと見つかると信じて探せる。

窓の外、振り続ける雨音が少しだけ強くなった。
建物内部の湿度がそれだけでぐっと高くなった気がして、息がし辛いと深呼吸をする。
少しずつ建物内にいる人間が家路に着き、減っていく中、それでも見つからない探し物。
時々合流してはまた二手に分かれを繰り返すたび、なかなか見つからないのに、きっと見つかる。と信じる気持ちは増していった。
ありがとうありがとう。もし見つからなくても。家路につけなくなっても。あなたがそうやって真摯に探してくれるだけで息ができる。と心の奥底から思った。

見つからない物は何だっただろう。
靴だろうか、ショールだろうか、バッグだろうか、傘だろうか。
それとも、それらよりもっとずっと大切な何かだっただろうか。
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