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何度だって

たったひとつの欲しいものが手に入らないのなら、この切実な願いが叶わないのなら、最初から中途半端な自由も意思も、この命すらもいらなかったのに、なんて。
どこまでも子供地味た言い訳が唇の先から零れ落ちそうになって、必死で噛み付き引き止めた。

『過程を愛するべきだよ』

あなたがそう言ってどこまでも優しく儚く微笑んだりするから。
そんな台詞僕なんかに押し付けてきたりするから。
本当は、手に入れられないことを。叶わないことを誰より悲しんでいるのは僕ではなく、あなただということが身にしみてしまうではないか。

「なんて酷い。あなたは何においてもぬるすぎる」

僕はあなたを臆病者と口汚く罵ることもできずに小さく呟く。
僕にはあなたが作り上げる穏やかで寂しい静けさを、どこまでも無神経に自分勝手に蹴散らすことなんてできないからだ。
残念ながら、僕はもうそんなことが平気でできるほど無垢でもないし強くもない。
しかしその小さな呟きすらその耳に受け止めあなたはますます。今にも夢か幻のように掻き消えてしまいそうな薄く儚い微笑みを滲ませた。

『確かに君に比べたら僕なんてぬるい。だけど君は僕にとってあまりに。あまりに熱い。その灼熱に今にも焦がされ、僕なんてあっという間に灰の欠片になってしまいそうだ。そのことを僕がどんなに恐れているか、君は知らないの?』

なんて酷い。僕はもう一度呟く。
消し炭になりそうなほど焦がれているのは僕の方だと言うのに。
悲しみは譲れても、他の何を譲れても、こればかりは譲れなのだ。
言葉ごと噛み締めていた唇が熱を伴ってじんじんと痛むけれど、僕はそこに突き立てた歯を開放する気なんてなかった。
このまま、噛み切ってしまえばいいのだ。
そうしたらきっとあなたは慌ててくれる。そうしたらきっとあなたのその、どこまでも不安定で寂しい儚さも、もう少し現実(リアル)に戻ってきてくれる。

僕にとっての現実から、あなたはいつの間にそんなに遠く離れてしまったの。

『…      』

僕を呼ぶあなたの声が、ほんの少し困惑に歪んだ。
だけどまるで僕の名を呼ぶその声が、駄々をこねる子供を宥めるようにして僕の耳を撫でるから、僕は行き場もなくただあなたの膝の上から遠ざかることもできずに身を竦める。
心の器と器だけがこんなに近くにあったって、心そのものが寄り添えないなら同じこと。

どうしたら。
どうしたらあなたをここまで引きずり出せる?
諦めてよ諦めてよ。そのためなら、僕はなんだってするのに。
この忌々しい唇を噛み切ればいいなら今すぐする。何が気に入らない?言ってくれれば今すぐ排除してみせるのに。
何があなたをそこに釘付けにする?あなたを打ち付け動きを封じる杭を引き抜けるなら、あなたが綺麗だと慈しんでくれたこの手が傷ついてしまったとしても、僕はなんてことないのに。
大声で喚き散らし暴れればいいの。その肩に爪を食い込ませ血を吐くように叫べばいいの。
何を引き換えにすれば手に入れられるというの。
何を犠牲にすればこの願いが叶うというの。
今すぐ教えてよ。もう引き返せないのだから。

ただ、何度でも何度でも。
僕はあなたをこちら側へ引き寄せようと呼ぶ。
例えそれがあなたと僕の致命傷となると知っていても、何度でも。

僕にリアルを頂戴。
生々しく息づく生物然とした、あなたを丸ごと頂戴よ。
ぬるいその温度ごと、僕の灼熱で燃やし尽くしてあげるから。
僕と一緒に灰になってよ。
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