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距離感の認知法

「人に優しくするのって疲れない?」

子供みたいな無垢な目をして、だけどその口が紡ぐ言葉は苦笑するしかないくらい擦れに擦れた残念な言葉。

「人に優しくするのって大変だよ。一度甘やかすと人はすぐに図に乗ってもっともっとと欲しがり始める。僕はそれが分かった途端萎えるんだ」

人って我侭や贅沢が好きで、欲望に弱いから。

気だるげに頬杖をついてマナー違反。
手のひらに押し付けた頬が柔らかく歪むのを、僕はただ眺めていた。
きっとその頬は甘やかでぬるいのだろう。不用意に手を伸ばして触れるわけにはいかないけれど。
だってあまりに、あんまりにも僕らの間には距離がありすぎる。
メートルで測ることができる身体と身体の距離も、どんなものさしを持ってきても正確には測ることのできない心の距離も。

…数値に表せない方がいいこともあるんだなぁ。

「どうして君はそんなに人に優しくできるの?面倒くさくない?」

本当に面倒くさそうに、だけど答えを欲して疑問を投げかけてくる。

『それがどれほど面倒くさいことでも、欲しいものがあれば渋々でも何でもするでしょう?』

僕は少しばかり汚れた言葉を返事代わりに投げ返す。
すると薄く目を細めた人は皮肉な形に口端を歪めた。

「そうか、君はいつでも見返りを求めてそうするんだね。でもそれって本当の優しさ?無償の愛は君の辞書にはないの?」

『欲しいの?そんな不確かなもの。先に君が言ったことだよ。人は我侭や贅沢が好きで、欲望に弱いんだって。自分が欲しいものと相手が欲しいものの利害が一致すれば、何でもスムーズに事が運ぶと思わない?』

無償の愛で勝ち取れるものなんてないんだよ。
そこにあるのはどこまでも独り善がりな自己満足だけ。それでもいいなら僕は止めないけど?だってそっちの方が僕にとってはとてつもなく面倒くさい上に得るものがない。
無償の愛こそ、相手を付け上がらせるだけの悪循環。
相手にとっても良くないよ。
それならいっそ、欲しがればいい。欲しいもののために笑えばいい。
何事も等価の代償が伴うことを教えてあげればいい。
贖いってやつだね。

「じゃあ、君は僕が欲しがって何かを差し出せば、それ相応の何かをくれる?」

途端ニヤニヤと良からぬことを企むようないやらしい目になった。
それを見て僕は嫌悪するどころか、そうこなくっちゃ、と心の中でガッツポーズを取る。

『利害が一致すれば、ね』

曖昧に溶かして手を伸ばすのは、柔らかな頬。
そこに無事この指先を触れさせその感触を知覚するために、僕はものさしで測れるだけの距離を縮めた。
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