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ボツか採用かは未確定。

襤褸雑巾。

それだけだった。
普段なら不必要。すでに自分を楽しませる玩具にもなりえない。
もはや価値のない、いつもなら適当に捨て置くはずの、それ。
なのに何故だろう、それがここにあるのは。
それが、限られた人間しか入室させないこの私室に転がっているのは。
狭くはないが、物が散乱して乱れた私室。
これ以上余計な物は増やさないようにしなければ、と思っていたのに。
元々少なかった足の踏み場が減ってしまった。
どうしてだろう。
分かっていたのに。
面倒くさいことは嫌いなのに。
余計な荷物など、不必要なのに。
もう、それに価値などきっとないのに。

まじまじとそれを眺める。
もはや襤褸雑巾としか呼べない、自分にとってもはや価値なきもの。

しかしそれらは愚問だった。
自らの手でそれを持ち帰ったのだから。
ただ、その理由が自分でもわからない。

なんとなく。

そんな簡単な言葉しか浮かばなくて、それが妙にもどかしくて。
思わず舌打ちをした。

「…ぼろぞーきん」

口にしてみる。
床に乱暴に落ちたそれを揶揄して。
しかしそれはこちらに対して歯向かうことも、睨むことも、
それどころか何の反応も寄越してこない。
閉じられた瞼は青白く、投げ出された四肢も髪も血と泥で汚れてそのまま。
纏っていた衣服など、ほぼその役割を果たしていない。

それらは全て、自分でわざとそうしたのだけれど。

…もしかしたら、もう駄目かもしれない。

普段なら、そんなことも思いもしないのに。
どうでもいいのに。
そう、最初は思わなかった。どうでもよかった。
最初は、いつも通りだったのだ。
いつも通り、気まぐれに鬼ごっこをはじめた。
逃げ惑う獲物を捕まえて、遊んだ。
気が済むまで。
普段は、そこで終わり。
適当に放置して、その玩具が完全に駄目になったら捨てに行く。
ゴミは、ゴミ箱へ。せめて街はこれ以上汚すな。
そう、奴が口を酸っぱくして言うからだ。
全て従うつもりなどないけれど、この程度ならまぁいいか、と適当に守っていただけ。
別に。譲る譲れないとかいう、切羽詰ったことでもないし。
問題はいつも、自分が面白いか否かだけだし。
それに、ゴミをゴミ箱へ持っていく自分たちを見て、ますます獲物たちが怯えあがるのが気持ちよかったし。
次の獲物との鬼ごっこもまた、余計に楽しむことができる。
ちょっとしたスパイスみたいなものだ。

…そう、恐怖。
その一色だけにまみれた視線。
逃れようと足掻く粗い呼吸音。
もつれる脆弱な手足。
視線をそらす脆い精神。
哀願する悲鳴。
絶対的な恐怖だけがその身全てを包んだ時、自分たちにしかわからない、しかし濃厚にふわりと香る、甘い匂い。
それが全て。
それら全てが揃った時、始めて自分たちの至上の玩具となる資格をもつ。

…そうじゃなかった。
これだけは。
逃げた。
最初は同じように。
だからいつもと同じように楽しんだ。追いかけた。
だけど、捕まえて遊んでいる時、今までのどの玩具とも違うことに気づいた。
どう違うのか、いまいちわからなかった。
ただ、遊び終えて、普段なら適当に捨て置くはずのそれを、何故か、放置できなかった。

ゴミはいつも、その襟首を掴んで、乱暴に引きずってゴミ箱へと運ぶ。
だけどこれだけは、肩に担いだ。
これ以上、傷を増やさぬように。
相方と合流する前に、私室に運んだ。

何故相方に見つからぬようこっそり私室に運んだのか。
そもそも、何故持ち帰る?
はたして傷を増やさぬよう肩に担ぐ意味などあったのか。
すでに己の手で襤褸雑巾としか呼べぬほどに痛めつけたというのに。

ぐるぐると己の思考をループする疑問。

埒が開かない。
元々、考えることは苦手だ。

ふと、床に転がった襤褸雑巾を見やった。

ぴくりとも動かず、放り出したままの姿でそこにある。

「…ぼろぞーきんのくせによぉ」

洗えばましになるだろうか。
繕ってやればいいのだろうか。
修理すれば治るのだろうか。

少しは見れる姿に戻るのだろうか。
また、遊べる玩具に戻るのだろうか。
自分を楽しませてくれるのだろうか。

しかし、その未来への期待よりも、そのための手間の方が明らかに面倒だ。
こんなことなど当然初めてだから、どう対処していいのか、どうすればいいのかなどわかりはしない。
普段ならそう、街へ出れば幾らでも他の玩具があるのだから。
こんな面倒なことなどしなくとも、毎日存分に楽しめる。

なのに、…何故、これなのか。

床に落ちたまま、動かないそれ。

「…なんで持って帰っちまったんだろぉなぁ…ナァ、子猫ちゃん?」

当て所なく呟く己の問いに答える者など、元よりこの私室には存在しない。

あるのはただ、床に転がった襤褸雑巾だけ。



…すみません。

とりあえず、これは練習、ということで。
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