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ひとり、素足で歩く「今」。

ただ、「今」に慣れていくのが悲しい。
どんなものであれ繰り返し繰り返せば、この心もこの身も、こんなにも簡単に慣れていく。
あの頃僕はいつも「今」が壊れるその時に怯え息を殺していたけれど、どんなに残酷でいて痛々しい瞬間が僕らを覆い尽くしたとしても、「今」にさえこんな風に慣れてしまえるのだから、いつかその悲しみにも慣れてしまいそうで怖いと思っていた。
ただ、「今」に慣れていくのが酷く寂しいことのように思えていたんだ。

『大丈夫だよ』

君の声が優しく、木霊する。

懐かしい夢を見て、目が覚めた。
ふ、あまりの懐かしさにただ、笑おうとして失敗してしまった。
まだ薄暗い部屋にひとり。
君がいなくなって久しい、君の記憶残るベッドはあまりに。
君が残したぬるま湯に守られ浸かり続ける僕にはあまりに冷たい。

大丈夫だよ。
そこここに。君の記憶はちゃんと残ってる。
君を忘れることなんて、僕にはきっと一生無理なんだ。
君が僕の目の前から姿を消したことで、君は余計に僕の心の中に住み着いた。
分かっててやったんじゃないかと疑う瞬間もあるけれど、だけど君はどこまでも真っ直ぐだってこと、ちゃんと分かってるから。
だから大丈夫。

不安に飲まれることを必死で否定するために、確証のない祈りと共に君の口癖を口にして、僕は急いで微笑んで見せるけれど。
夢からふわり、蘇った儚い君の残像は、緩くかぶりを振って僕から目をそらしてしまった。

大丈夫だよ。
僕は君が好きだから。すごくすごく、好きだから。
いつでも僕は僕を君に預けるよ。そしていつでも僕は君を受け止める。
君は僕を守るって言ってくれたじゃない。
すごくすごく嬉しかったから、君が僕を守ってくれる代わりに、僕は君を守るよ。
どんなことが起こっても、何があっても、どれほど時間が経ったとしても、僕は君を完全に思い出なんかにしない。
だから大丈夫。

震える指先をとにかく黙らせるために、かたちもない願いと共に何度も君の口癖を口にして、僕はもう一度急いで微笑んで見せるけれど。
儚いまま確かな姿を現してくれない君はやっぱり、緩くかぶりを振って僕の目を見ようとしなかった。

君なしには生きてなどいけないと。
君がいない世界になど僕にはもう住めないと。
そう脇目も振らず盲目的に叫べたらどんなにいいかと。
君がいなくなっても尚、君が残したぬるま湯に守られ浸かり生き続ける僕は、時々無性に思うのだ。

大丈夫だよ。
僕は、大丈夫だから。安心して。心配しないで。
君がいたっていなくったって、ちゃんとこうして生きている。
笑えてる。ご飯も食べてる。移り行く日本の四季を感じ、君の記憶を手繰っては、決して薄れさせないよう夢に見る。
だから大丈夫。大丈夫なんだ。

気を抜くとすぐに溢れ出しそうになる激しい愛しさをぶつける場所がないことを知りつつも、僕はもう一度急いで微笑もうとして失敗してしまった。
ゆらり、夢のままの君は僕から目をそらしたまま儚く揺らいだ。

強ければいいと思ってた。
強くなれば全部が解決すると。
強くなろう、強くあろうと。ただがむしゃらに。
そうすれば君といられると思ってたんだ。
君に守られ、君を守り一緒に生きていけると。

…信じたかったんだ。

懐かしい夢を繰り返し繰り返し見る。
君の残像を追いかけて、まだ薄暗い部屋にひとり蹲る。
大丈夫。僕は生きてる。だから大丈夫だよ。
揺らいでしまった君の残像が消える前に、急いで目をそらして膝を抱えて呟く。
君の口癖を何度も何度も。
今にすら君を恋しがる我侭を、許してくれなんて請うつもりはないけれど。

ただ、「君がいない今」にさえ慣れていく自分が怖いんだ。
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