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愛情表現方法その3

ただ、泣かないでいてくれたらいい。と思う。
痛まないで悲しまないで苦しまないでいてくれたらいい。
笑ってくれてたらそれだけでいい。と心底思うのだ。
君の存在はたったそれだけであっという間に鮮やかに周囲を温める。
俺はいつもその奇跡のような瞬間に立ち会うたび言葉を失い、あまりの心地よさにうつらうつらと揺らいでまどろむ。
君とそっくりな柔らかなまどろみの向こうは、君と正反対と言っても過言ではないほど、呆れの溜め息しか出ないほど騒がしかったり荒々しかったりもするけれど。
君はそれでもいつも穏やかに微笑むから、俺はただ黙って腕を組む。

君はいつだって笑っている。
どんな時もいつもひっそり静かに。嬉しげに、楽しげに、優しく柔らかく、包み込むようにして笑う。
どんなくだらないことだっておざなりに放り投げることもせず、穏やかに。そして丁寧に、いつも真っ直ぐ手に乗せる。
その君の不器用な優しさは今までも、そしてこれからも君を面倒事に巻き込んで、時に苦しめ、時に困らせる。
そしていつか君自身を壊してしまうだろう。
きっと君はその危険も、それを危惧し見え透いた未来に密やかに怯える俺たちをも知っている。
だけど君はそれでもやめない。
微笑みを浮かべ、いちいち丁寧に手のひらの上に乗せて抱く。
抱いて、丁寧に、身体の中央真っ直ぐに届く声で俺たちの名前を呼んでくれる。
君は強い。誰よりきっと、強くて優しい。
だから俺はできるだけ簡素に。それでいて君に真っ直ぐ届くよう心がけて、君の名前を呼び返す。
君の呼び声を真っ直ぐ受け取れるよう心がけて、君を見つめる。
返事を返すにも真剣勝負だ。

『どうせいつか壊れんだから、今の内にもっと必死になればいいのに。回りくどい奴だな』

彼は苛々、だけどどこか脱力するように言うけれど。
俺が君に対して抱く感情と彼らが君に対して抱く感情はきっと違う。
だからこれでいいのだろう、と俺は目を閉じる。

生憎俺には心の奥底から信奉する神も仏もない。
だから、どうか君をあらゆる危険や悲しみや苦しみから守ってくださいと頭を下げたり手を合わせるような行為をしない。
この目で見定めたこともない、神や仏だとかいう曖昧な存在にそんなことをして貴重な時間を無駄に潰してしまうくらいなら、自ら動いた方が断然早いし分かりやすいと思うのだ。
俺が信奉するとするなら、もはや君以外考えられないのだから。
俺はせめて君に背を向けて、正面からぶつかる強風避けにでもなれればそれでいい。
その目にゴミが入らなければいい。
君が幸せであればなんでもいい。と思う。

君はいつかきっと壊れるだろう。
自分以外の全てを守ろうと、俺たちすら守ろうとして、俺たちもろとも壊れるだろう。
どんなに君を守りたいと思っても、俺たちは君を守り切ることができず、共に過ごす今すら危うくさせるだろう。
今が壊れたその時、それでも。
ただ、泣かないでくれたらいい。と。
痛まないで悲しまないで苦しまないでいてくれたらいい。
笑ってくれてたらそれだけでいい。と。
このままだと本当に君もろとも全員総崩れで壊れることを知っていて、それでも力づくで止めようとも思わない俺やなんかは、願うのだ。

時々。
本当に時々だけれど、…時間よもう少しだけ。もう少しだけ、今を許してくれと、神や仏よりもっと曖昧でいて抗えぬ対象にすら祈ってしまいそうになることがある。
ひたすらに君の幸せを願い、そしてできることならもう少し、君のそばにいたいと。君の幸せそうな微笑みをこの目で見届けたいと無茶を願う。
それと同時に、全部が。俺たちもろとも君が壊れた時のその姿をも見てみたいと、真逆でいてもっとも叶わなぬ無茶を願ってみたりもする。

『…お前もある意味厄介だ』

彼は力の抜けた馬鹿面を隠そうともせずに溜め息をついた。
なんでもいい、笑っててくれたらそれだけでいい、俺は口には出さずに目を閉じる。

これが、俺の最大の愛情表現方法。




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好きだからこそ。そしてさほど遠くない未来の崩壊を知っているからこそ。
矛盾していても、一歩下がった位置からどんな経過も結果も全て見たいと願う愛。
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