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失くした指輪を探す旅

例えば君が俺の目の前から煙のように
ゆらり
ある日突然儚く消えてしまったら
正直なところそんな想いに駆られ怯える暇すらなかった
それだけ俺は脇目も振らず
ただ
ただ生きることができていたということだろう

ある日突然君は
君を失くすことをすら考える暇なく生きていた俺の目の前から生々しい気配だけを残して
幻と疑う隙が僅かでもあればどれほどいいかと思うくらいありありと痕を残して
揺らぎようのないほど強く鮮明な記憶を残して
行ってしまった

それはあまりに突然過ぎて
ただ生きることだけに精一杯になっていた俺には
どうしてこうなったのか
こんな結果をのみ俺たちの間に呼び込んだものの正体がどんなものだったのか
今どう振舞えばいいのか
これからどう生きていけばいいのか
ちっとも
欠片も分からず途方に暮れた

せめて心の準備をさせてくれたら良かったのにと残酷なことを平気でする君を恨んだりもしたけれど
どんなに前から知らされていたとしてもきっと俺はこの結果に対して
俺が
そして君が望むような振る舞いなどできなかったのだろうと思い直し
自分自身を含め
様々な状況に追い詰められ
こうするしかもう手立てがなかった君の悲しいまでの優しさに気づいてまた
呆然とするだけだった

優しい君はもう俺の目の前にはいないというのに
あとからあとから溢れ出しそうになるほど込み上げる感情いちいちの
責める言葉も謝罪の言葉も
そして感謝の言葉も何ももう
俺よりきっともっと傷つき孤独に震える君に届ける術もない

君とはもう会えない

もうひとりの俺が置いてけぼりをくらった子供のように
呆然と立ち尽くして悲しいだけの言葉を呟く

君とはもう会えない

もうひとりの俺が帰り道もなくした迷子のように
絶望感ばかりでその場から動けず寂しいだけの言葉を繰り返す

分かってる
分かってるんだ
分かってるから頼むから
頼むから黙ってくれ

君とはもう
会えないんだ

千夜君を夢見て必死で越えても
一夜一夜辛うじて息を殺し眠ったふりをしても
君とはもう会えないことを知ってる
分かってるから

『待っていろ。いつかまたお前の元に戻ってくる』

君が俺に残した言葉が結果的に嘘になろうとも
俺はどこかで信じ続けて生きていく
それがどれほど叶う見込みも足掻く手立てもなく
途方もなく続くばかりの旅路となろうとも
いつか君が残していった道筋を辿り続けて
君を見つけ出す

「…待ってろ。いつか絶対に追いついてみせる」

低く唸る呟きはもう
眩暈がするほど遠く離れた君には届かない
そんなことくらい分かっているけれど

もはや君すらをも失くした俺にとって
君という存在そのものだけが
唯一
俺の生きる意味



Another side of “千夜一夜”
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