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互いに向かって伸ばした手と手

互いに向かって伸ばした手と手。
だけど自分に向かって伸ばされた手に、一体どんな感情や願いが篭っているのか、触れられないから分からなかった。

互いに向かって伸ばした手と手。
だけど相手に向けて伸ばした指先に、一体どんな祈りや欲求が篭っているのか、届かないから分からなかった。

その名を呼べばその時相応に反応を返してくるし、時折こちらの名を呼んでくるのだけれど。
自分の声にも相手の声にも、一体どんな想いが込められているのか、それをどう言葉に言い表せればいいのか未だ分からない。
ただ、手を伸ばし合い、ただ、名を呼び合う。
たったそれだけ。他には何もない。
だけどそのことが、例え重なり合わずに擦れ違おうとも不毛だなんてとても思えなかった。

まるで睨み合いとも取れそうな、相手の一切を見逃さないよう必死で目を凝らす自分と相手の間。
限界まできつくふり絞り放たれる矢のようなスピードで行き交い、身の中心に突き刺さるように。突き刺すように。
痛みを伴うほどの容赦ない視線はしかし、互いに届かせられる唯一だった。

さほど切実だったり、切羽詰っていたりしていないはずなのに、もどかしさに時々泣きそうになる。
子供のように聞き分けなく、泣いて喚いて、走り出してしまいそうになる。
それをぐ、っと喉の奥に押し込むことに、自分も相手も必死になる。
必死になって、だけどそんな素振りひとつ見せないように、平然さを装ってただそこに立つ。

互いに互いの間、触れられないからその大きさを測ることなんて決してできないけれど、何故か目に見えると錯覚を起こしそうなくらい、確固たる存在感を放ってそこにある距離。
距離、という名の、透明で触れられない大きくて頑なな獣がいるみたいだ、と思う。
それを横にどかすなんて今のところできないし、してはいけない気がする。
そんなことをしたら、何もかもが壊れて二度と元に戻らなくなりそうだった。
多分、互いの間、均整を保つように動かないそれはきっと、互いにとって今は必要不可欠なものなのだろう。
いつか、不必要になってくれるのだろうか。

あてどなくそんなことを思いながら、その日がくることをどこかで望み、どこかでまた怯えては。
ただ互いに向かって手を伸ばし、互いの名を呼ぶ。
自分の手と声に。相手の手と声に、一体どんなものが潜んでいるのか分からないままに。



…きっと。

僕は思う。

今、僕が彼に駆け寄ったとしても、彼はきっと無意識、弾くことを忘れて受け止めてしまうのだろうと。



…きっと。

俺は思う。

今、俺が相手を求めてしまったとしても、彼はきっと無意識、躊躇を忘れて駆け寄ってきてしまうのだろうと。



間にあるべき距離という名の大きく頑なな獣を弾き、それが崩壊の悲鳴を上げたとしても。
その叫びに胸を痛めながらそれでも、相手以外の全てを思う気持ちすら投げ打ち、行動に出てしまうのだろう。
だからきっと、今は互いに向かい合って立ち尽くし、手を伸ばし、その名を呼び合うことしかできないのだろうと。

…あぁ。

僕は、俺は、思う。

自分と相手は寂しいくらい正反対なはずなのに、皮肉なくらい、全く似すぎている。
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