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新月の夜に逢いましょう

それは、等しく暗闇。
何もない空っぽの空間を、べったりとした濃厚な漆黒で塗り潰したような、埋め尽くしたような、そんな暗闇。
他に何もないでしょう?
何も感じない、何も聞こえない、何も見えない、何も、

吸える酸素すら、ないでしょう?

漆黒を引き裂くような光。
すぐに、雷鳴。
容赦ない雨音が全てを叩き伏せ、激しい風が全てを揺さぶる。


---


ぼぅ、とした頭を抱えて目が覚める。
ぐったりと重たい身体に、冷え切った汗、筋肉も関節も全て、遠すぎて扱えない。
ゆっくりと目に映る、間近の肌色と、薄い灰色のシーツ。
「…ぁ」
ぽつり、声を出せば。
それは発した俺がぎくりとするほど掠れ、痛んで萎んだ。
少し視線を上にすればたやすく見つかる、俺を抱き込み眠る彼の寝顔。
どこか幼く、柔らかなそれを見て、あぁ、また悪夢を見たんだ、とぼんやり思う。


新月の夜は駄目だ。
特に、酷い嵐が重なった日なんて、朝から食欲もないし、まるでずっと眠いみたいに、身体も重いし頭がぼーっとしてちっとも役に立たない。
その時の俺を初めて見た仲間曰く、『一日中夢の中を漂ってるみたいな顔』をしているらしい。
記憶も曖昧になるんだ、確かにそうなのかもしれない。
ある人は慣れてしまって放っておいてくれるが、そうともなればさすがに仕事にも支障をきたす。
でもこればっかりは持病みたいなもんだから、新月の嵐の日だけは休むようにしている。
両方が重なるなんて本当に稀なことだからか、彼も他の仲間たちも、それに関しては何も言わなかった。

こんな状態がいつから始まったのかは分からない。
ただ、気づけば暦など見なくとも、新月だけは身体が先に感知した。
ちなみに、他は満月すら分からない。

新月の嵐の日は、日がな一日自分の部屋に閉じ篭り、息を殺してベッドの上で過ごす。
当然食事なんて摂らないが、一日抜いたところでさほど問題はない。
ただ、身体も何もかも全部投げ出して眠る。
『手負いの獣が傷を癒すためにじっと丸まって寝てるみたい』
慣れたある人は笑った。
一体どんな傷があるんだか知らないが、俺はただただ眠り続ける。
淡々と、延々と。
月が姿を現すまで。

次の新月の夜に、嵐が訪れないことをひたすら願いながら。




(一旦停止)
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