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「41.眠い」の処分品

時々、だけれど。
時々、自分の頭がなんだか重たいものに感じる時がある。
頭痛とか具合が悪いとかじゃなく、物質的に、重たいものなんだな、と自覚する感じ。
首の筋肉が不意に頭を支えるのを手抜きする感じ。
ぐらり、重たいなぁ、と、ぼんやり思う。
高い高いところから、人が落下する時。
足から飛び込んでも、自然頭が下になるんだそうだ。
それは実際に重たいからなんだろう。
重たいなぁ。
ぼんやり思う。

落下。

そういえば。
眠くて眠くてたまらない時。なのに妙に意識が冴えてて眠れない時。
真っ暗闇の中。ベッドに潜り込んで、行儀よく仰向けになって、目を閉じた時。
ぐぐぐ、と、頭だけが布団の中に埋もれていくような感覚がある。
まるでベッドもマットもシーツも透ける手が下から伸びてきて、頭を鷲掴みにして、下に引き込むみたいに。
だけど頭はシーツもマットもベッドも透けないから、ぐぐぐ、とめり込むだけで。
痛くない。
ただ、堕ちていく感じがする。
頭だけ。

落下。

頭だけ。
頭から。
頭って重たいなぁ。と、なんとなく思う。

こんな、妙に頭の重さを自覚してしまう時。
いつも、目を閉じてみる。
眠たいわけではなんだけど、妙に頭が休息を欲している気がするからだ。
ぐらり、やっぱり重たいのだけれど。
目を閉じるとつい、重たい頭は後ろに倒れようとする。
がし。
後頭部を鷲掴みにされる感覚。
…あれ。
今、布団の中じゃないんだけど。
横になってない。ソファに座ってたはず。重力の負荷の方向は、正しく俺に教えてくれる。
俺は、確かに座っている。
それに何だろ。頭を掴む手が生々しくて、ちょっと痛い。
引っ張るどころか、支えてくれてる感じも今までと違う。
うっすら、目を開く。

「あれ。寝てたんじゃなかったの。起こしちゃった?」

声が降ってくる。
否、横から右耳に滑り込んでくる。
「…あれ」
ぼんやりした声が、喉と介して舌と唇を僅かに震わせた。
自覚はある。

「寝るんなら肩貸してやっから。後ろに倒れないで」
このソファ、背凭れ低いから後ろ倒れて寝たら顔が上向いちゃうし。そしたら後から肩凝るよ。
声はきちんと聞こえる。
でも、なんだかうとうとしてる最中みたいにはっきりしない。
すると、ぐい、掴まれた頭が少し横に促された。
乱暴じゃないけど、でもちょっと強引な感じだ。
だけどうとうとしたままの俺が、そのままされるがまま頭を傾けると、コトリ、頭が柔らかいような、固いような何かに引っかかってそれ以上傾かない。
あぁ、心地いいかもしれない。
そう思う。
その温度は自分の重たい頭と違うけど、似た温度で。
その匂いは自分の身体に纏うものと違うけど、きっと種類が似ているもので。
…なんだか安心した。

落ちない。

あぁ、これも覚えがある。知ってる。
うとうとしながら思い出すけれど、もう一度瞼を開く気になれなかった。
「………、く、ん」
声だけ絞り出そうとするけれど、うまく出なかった。
あぁもどかしいなぁとか思いながら、だけどもう、あまりに心地良くて。
「うん? 大丈夫だよ、まだもう少し寝てていいよ」
起こしてあげるから。
先刻よりずっと近くで、少し喉元で絞ったような優しい声が聞こえる。
うん。
思わず甘えて頷くけれど、ちゃんと頷けたどうかわからない。
少し右側に凭れるようにして、俺はきっとこのまま転寝をしてしまうんだろうな、と他人事のように思う。



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