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パステルの泡沫

とある外国人作家の処女作品を手にしていた。
それは彼がまだ十代の頃に書いたもので、まさに大人ぶった子供が書いた稚拙な文章だったけれど。
海を航海する船の船員ふたりと、そのふたりが揺れる船の甲板の上で話す、小さな男の子と雄鶏の話。

少年は、帰る家も、財産もなにもなかったけれど、一羽の雄鶏を大切に抱いて旅をしていた。
雄鶏は少年にとって唯一の財産であり家族であり、大切な友人でもあった。
この雄鶏がいなかったら、少年は本当に、ひとりぼっちだった。
少年と雄鶏がある街へ旅をした時、ひとりのおばあさんと出会った。
おばあさんは親切に少年と雄鶏を向かえ、もてなしてくれたけれど、おばあさんの家には風見鶏がいなかった。
少年はおばあさんの家の風見鶏の代わりに、自分の雄鶏を差し出した。
雄鶏は毎朝同じ時刻に鳴き、風を教えてくれた。
おばあさんはとても喜んだけれど、少年は風見鶏になった雄鶏と別れなければならなかった。
ひとりぼっちだったおばあさんは、ひとりではなくなった。
ひとりぼっちではなかった少年は、ひとりぼっちになった。
おばあさんは少年を引き止める。
風見鶏が、いつもと違う時刻に鳴いた。

船員は、さもその少年を見てきたかのように話をする。
ちゃぷり。
波の音だけがそれを聞いていた。

稚拙な文章はそれでも、淡く美しいパステル絵画のような情景と、海の匂いを運ぶ。
そんな、本を読んでいた。

見知らぬ工場のそば。
むき出しの大きな部品に座り込んで。
たまに、工場の中を覗いては、また本を読む。
何かを作りながら、本を読んでいた。
工場の人に不要な部品を分けてもらって、何かを作っていた。
太さの決まった鉄パイプを持っていた。
それは随分と消費してしまって、長さが足りなくなった。
工場へ行くと、そこの従業員がこちらを向いた。
もうすでにその工場の少ない従業員全てと顔見知りになっていた。
「この太さのパイプ、ありませんか」
問う。
「あるよ、あと一本だけ」
そう言って、人差し指を立てる。
「ください」
頼む。
「いいよ、待ってな」
微笑むでもなく、まるでそれが当たり前のように彼は奥へと入っていった。
もうひとりの従業員がこちらを向く。
「そういえばお前、この奥に置いてあった工具、使ったか?」
「いいえ。工場の工具は使っていません」
「そうか。そうだよな」
彼はこちらを十分に信用しているらしく、すんなり信じてくれた。
「---、」
何かを言いかけて口を開いた。
手には、短くなったパイプの残りと、外国人作家の処女作品。


そこで、目が覚めた。
意味は分からない。分からないけれど、情景はありありと覚えていた。
パステルの海と空と、建物、人、風見鶏の声。
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