スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

落下。落下。落下。…停滞?

落下速度はいつまで経っても変わらない。
あまりに変わり映えがしないものだから、そのスピード感に慣れ切ってしまい、ついつい落下していることそのものをすら忘れてしまいそうになる。

空は朝焼けを待たずして雫を落とし、落下速度の変わらないそれを追い越して地面にぶつかり無残に弾け飛んだ。
僕はその破片を捕まえようと、無謀にも手を伸ばしては空を掻く。

落下し続けるそれが地面に激突する刹那は多分、永遠に来ない。
少し、雫が羨ましいとそれは思う。
スポンサーサイト

仕合せな羽虫

君が自嘲しながら僕に向けてゆるりと差し出した手のひらは、確かに君の言う通り無残にも汚れ傷つき、嘘でもお世辞でも奇麗だなんて決して言えないものだった。
だけど僕はそれでも思う。
君が汚れたのはきっと、君があまりに優しすぎたせいだと。
たったそれだけの要因で、人の手のひらなんてものは意図も簡単に汚れ傷つくものなのだ。
いつまでも赤子のように柔らかく甘く美しいままの手のひらでいられるわけがないのだ。
徹底的なまでに、完膚無きまでに、君はただ、人より少し優しすぎただけなんだ。

僕は誘蛾灯に集る羽虫のよう。
君の優しさに貪欲にむしゃぶりついて、ますますその手を汚してしまう。
だけど僕はそれでも思う。
君がいつか僕を両手のひらで容赦なく叩き潰してくれたなら、それはどんなに仕合せだろうかと。
僕の体液で君の手のひらがますます汚れる刹那を、せめて死に際見られたらいいのに。

夜が来るよ。

人々が行き交う喧騒の中。
無数のそれら人間が発する言葉をいちいち拾い上げるほど人間を愛せず、だけどそれらを完全に遮断できるほど人間を嫌えない僕はただ、ざわざわとただのノイズに成り下がった騒音をすり抜け歩いていた。

胸に抱いた甘く華やかな香りのする花束やリボンのついたプレゼントはきっと、胸にぽっかりと口を開けたまま埋まることない穴と交換条件に手に入れた幸福だ。
あの子の誕生日を共に過ごすこの喜びはきっと、あの日彼に穿たれ胸に開いたこの穴と引き換えに与えられ守られ続けている。

この空虚が埋まる日なんてきっとこない。
彼が僕の前に戻ってきてくれる日がこない代わりに。

『--- 
   ----
      -- 』

家路を急ぐ僕の周囲、ただのノイズだったそれらの合間、この耳が拾い上げてしまった声の欠片は、僕の名前を呼ぶ彼の声に変換されて脳内虚しく木霊した。

「…あぁ、」

思わず立ち止まり、雑踏の中彼の背中を探してしまった僕は、溜め息に似せて密やかに声を零す。

あぁ、僕はこんなにも。
こんなにも彼を探して未だ迷う。
こうして胸に花束やプレゼントを抱え、それを渡す相手がいて、そして僕の帰りをただ待ってくれる人がいる。
僕はその帰路に迷わずつけるこのつま先を持っているというのに。

胸にぽっかりと口を開け、閉じる気配もないそれを抱え、その身代わりに抱く幸福のなんと悲しく愛しいことか。
噛み合わない空虚と幸福でこの両腕はいっぱいだ。
大切にしなければ、大切にしなければと強く思えば思うほど、どこかで僕は、彼が僕の前に戻ってきてくれるのなら何でも捨てて行ける、…なんて。
彼が聞いたら本気で怒られてしまいそうなことを考え急いで首を振った。
そう簡単に捨てられるものではない。
そんな軽いものだったなら、僕は最初からここにはいない。
それが本当に大切だったから、捨てられなかったから、そのことを僕よりずっと分かっていた彼は僕の目の前から姿を消し、無茶苦茶だと言うしかないくらいの力技で無理やりにでもと僕をここに留めたのだ。

人々が行き交う喧騒の中。
俯いていた顔をめいっぱい上に持ち上げて、短い期間にあっという間に乱立したビル群のせいで、昔に比べて随分と狭くなった空を見上げる。
夕暮れ近づく空はそれでもまだ青々とそこにあり、この空が続くどこかに彼もまたいることを。そして時々は僕のように僕を思って空を見上げてくれていることを、情けないほど切実に願う。
もうそうすることでしか、僕は彼を想う言い訳を考え出すことができないのだ。

家路を急ぐ人々と同じように、僕は僕の帰るべき場所を知っている。
だけど迷う。
だけど立ち止まる。
彼が家路をなくし地図を放棄した身代わりに手に入れた幸福を、僕は抱え切れずに途方に暮れる。

『-- 
    -----
       --- 』

声の欠片にすら彼の断片を見出してしまう喧騒の中。
僕はひとり、家路に迷わずつけるつま先を持っているはずなのに。その場から一歩も動けずに、ただ呆然と夕暮れを見守った。

あぁ、夜が来るよ。
彼だけがいない幸福な夜が。
花束と、プレゼントと、埋まることない穴を抱えたままの僕の頭上に。
また。

迷うのは諦めるか続けるか、ではない。

僕は時々辟易して溜め息をつく。
君が抱く、途方もないほど青臭く使い古され擦り切れたような、ありふれた美しいばかりの夢と希望を毎日眺めていたら、溜め息のひとつくらいつきたくもなるというものだ。

きっと君は自分の夢や希望が、自分たちが生まれるずっと大昔から沢山の色々な人々に祈られているのにも拘らず未だ解決の糸口すら見えず、当然自分が生きているうちに叶うほどたやすいものでもなく、そしてまた、次の世代に受け渡したとして、正しく実現するものでもないことを知っているだろうにと。

僕は君の夢や希望をどうすれば叶えられるか知っていたけれど、それを口にしたところで君は決してその通りに動いてくれないことも知っていたから、溜め息をつくばかりで終わらせることにした。

その夢や希望はね、君が諦めたら叶うよ。なんて。
そんな卑劣極まりない大嘘(げんじつ)、今の君に言える勇気なんて僕には元よりない。

トリック&トラップ

君に僕の手の内全てを曝け出すには、まだまだ足りないものが多すぎる。
もう少し我慢していてよ、それが例えどんなに見え透いたトリックであったとしても。
知らんふりして黙ってて。
その程度の演技くらい、君からすればたやすいものでしょう?

君が掴んだその根の奥深く。
僕が用意している罠はもっとずっと深層にある。
今君の手の内にあるそれは、君を僕の本命の罠に引っかけるために仕掛けたお遊びみたいな罠の切れ端。
君がそれに気づいて壊れたみたいにゲラゲラ笑い転げてくれる日を、僕はこれで結構心待ちにしているんだ。
種明かしはそれからでも遅くないでしょう?

…ね、もう少しだけ我慢していて。
きっと君もろとも全部、僕がひっくり返してあげるから。
楽しみにしておいで。
僕は最後の最後、君ごと全部奪って笑ってあげるから。

懐かしい君に会うには、もう夢を待つしかない。

君はなかなか夢にも出てきてくれない。
どんなに呼んでもどんなに待っても、なかなか僕に会いにきてくれない。
まだ怒ってるの。
問いかけようとして、愚問に気づいて急いで飲み込む。
当然かもな。
いくら君が誰より何より僕に優しかったとは言え、
君をたったひとり孤独に凍えさせ眠らせたのは他でもない、僕なのだから。

君はその時をわざと縮めようと柔らかな太陽の匂いのする毛布をすら拒絶した。
君は一体どんな絶望感と孤独感の中で目を閉じたのだろう。
そして夢の中で僕を呼んでくれていたのだろうか。
なかなか会いに行けなかった僕を、少しは恨んでくれていたのだろうか。

君はなかなか夢にも出てきてくれやしない。
だけど、何年も呼び続け待ち侘びた僕の元に、君はようやく姿を現してくれた。
やっと再会できた君は、僕と最後に会った時の姿ではなく、僕とふたり並んで歩いていた、一番美しかった頃の君だった。

キラキラした太陽が誰より似合った君は、僕の自慢だったよ。
賢くて優しくて、どんなことがあっても必ず僕の元へ戻ってきてくれた。
何があっても真っ直ぐな瞳で僕を信じてくれていた。
僕が不機嫌だった日も、喜んでいた日も、悲しんでいた日も、なんでもない日だって。
君はいつでも空の匂いを纏ってそこにいてくれたのに。
どうして僕は君からあんなに簡単に離れられたのだろう。
君をたったひとりにすることになると分かっていたはずなのに。
誰より何より純粋無垢だった君に、仕方がなかった、なんて残酷で大人な言い訳、どうして平気で口に出来たのだろう。
せめて君が、恨み言のひとつ僕に言ってくれていたら、なんて。
穏やかさばかりで成り立っていたような君の性格を考えれば、当然ありえない希望的観測を胸に抱く。

今も思い出す。
何度も何度も何度も。
誰より美しく、清らかな微笑を僕に注いでくれていた君と過ごした日々を。
そして僕は何度も君を呼ぶ。
もう一度と切望し、それでもやっぱりなかなか夢にさえ出てきてくれない君を、今更虫のいい話だと分かっていながら何度も。

あぁせめて。
夢の中でだけでも君をもう一度抱きしめることができたらどんなにいいだろうか。

希望的観測(独白)

君を取り囲む難題全部吹き飛ばせるくらいの風になれたらどんなにいいだろう。
君を困らせる要因全てをなぎ倒すくらいの力が、今の僕にもあったらいいのに。

今、僕の目の前にあるこの両手は、一体何のためにあるんだろう。
一体どのくらい君の役に立てるんだろう。
俯いて黙り込んでしまった君を、くすぐって笑わせることくらいはできるだろうか。
君はそれで本当に心から笑ってくれるだろうか。

僕にはいまいちそれが分からなくて、同じところでぐるぐる回って堂々巡り。
元いた場所にただいま、おかえり。ひとりで呟く。

どうしよう。どうしたらいい?
ついつい優しい君に聞いてみたくなってしまうけれど。
僕はそれをぐっと飲み込んで、とりあえず君のそばに座ることにした。
触れるか触れないか微妙な距離が残る僕と君の腕と腕の間、それでも近づいた分だけ君のあたたかな体温の気配が分かって、僕は何故か泣きたくなってしまった。

悲しいんじゃないんだ、確かに君に何もしてあげられない自分が悲しいのもあるんだけど。
悲しくて泣きたいんじゃないんだ、ただ君の体温があんまりにもあったかくて優しいから、僕は色んな感情がいっぱい溢れてぎゅうぎゅうになってしまっただけなんだ。

もっとそばに寄ってもいい?
僕が聞く前に優しい君は微かに笑って僕にくっついてくれた。
その微笑が本当に君が心の底から零してくれたものなのか、それとも単に僕を慰めるために頑張って作ってくれたものなのか、僕には分からなかったけれど。
それでも密着した腕と腕の間を行き来する僕と君の体温が、僕のすかすかだった胸の中をいっぱいにするみたいに、君のすかすかな胸の中の一部でも埋めてくれたらいいな、と思った。

その気配に怯えるのは僕だ。

きっと誰より餓えているのは僕だ。

早くと願う。
早くとひたすら。

きっと誰より乾いているのは僕だ。

もっとと強請る。
もっととひたすらに。

必死で抑え込むこの爪が、君のあたたかな腕を傷つけてしまう前に早く。
…もっと。

壊すまでもない

いちいち注がれる微笑みと共に許しがもらえる時がくるまで待ち、その箱を包むリボンや可愛らしい包み紙を解くまでもなかった。

誰のためとか何のためとか、そういった表向き奇麗で真っ当な言い訳は幾らでもその時折必要に応じて簡単に作って手渡せた。

全部見え透いていたと言ったら。
全部口から出任せだと言ったら。

いとも簡単にあっけなく壊れることだって分かっていた。
だけど、わざわざ手を汚して壊すまでもない。
放っておいたって、形作ってしまったものはいつか壊れるのだから。

鬱蒼と茂った木々の枝葉の合間、種類も分からぬ小鳥が追いかけっこをしているのを見つけたって、別にその正体とか存在理由とか、どこまでも面倒くさくて難しいことなんてそうそう考えないでしょう。

あなたが思うほど、僕らはそんなに賢く正しい生き物ではない。
僕らは触れ合うまでもなくそれを見抜き、諦めに似た許容を共有しただけだ。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。