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間に鎮座するは、

君が信じる神様を、僕も信じられるかどうかわからないけれど。
君が神様の存在を信じている、という事実は信じられると思う。

神様っているのかな。
そう呟いた数年前の僕は、どこまでも頼りないガキだった。
大人にならないといけないような気がして焦っていたけれど、焦っても焦っても大人になれずに困り果てていた。
神様っているのかな。
僕がそうあてどなく呟いた言葉を、君は丁寧に拾って、誰にも負けないくらい堂々と胸を張って、
いるよ。
そう言い切った。
本当に?神様なんているの?
僕は喜びとも絶望とも知れない複雑な感情に襲われ、つい必死になって君に聞き詰めた。
君は焦る僕を一瞥し、それでも尚勝気に笑んで頷いた。
神様はいる。神はいる、と心の奥底から信じている人にとって、神は本当にいる。神を信じている人の心に神は絶対的な力をもって存在する。
だから神様はいるんだ。
それを信じるかどうかはその人次第だし、自分の神は自分でしかないと言う人もいるけれど。
君は僕よりずっと先をしっかと見据えて言い切った。
僕が何年もかけて捜し歩き、それでもヒントすら見つけられず途方に暮れていた疑問ひとつ、君は軽々と答えを出してしまう。

神様っているのかな。
あれ以来僕はそんな疑問を毎夜寝る前に暗闇の中ぽつりとあてどなく呟くことをやめた。
僕は本当は、神様なんていてもいなくてもよかったのだ。
ただ、誰かにいるいないどちらかの答えを断言してもらいたかっただけなんだと気づいたからだ。

君が信じる神様を、僕も信じられるかどうかは未だわからないけれど。
君が神様の存在を認めている、という事実は信じられると思った。
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とりあえず、

理由や意味なんて後から自然と付随してくるものだと思う。
だからとりあえず、今は胸いっぱいに息を吸い込んで、できる限りの大声でもって君の名前を叫びたい衝動に流されてみよう。
そのくだらない行為に理由や意味なんて、どんなに時間が経ってもどんなに頭捻っても、ないかもしれないけれど。

呼び止めたのにそのまま立ち消えそうな肩先が怖くて、急いで追いついて、ぶらぶら行き場なく揺れる腕を掴んで思い切り手前に引っ張った。
自分のせいなのに急激に接近した温度に内心激しく取り乱して顔が引きつった。
俺の前で泣くな。と衝動的に口走った後で、泣くなら俺の前だけにしろ。と言ってしまった。
どっちなの、と君が笑うから、あぁ、もう、知らない。と適当に投げた。
多分、これらにも理由も意味もない。

一身、一心。

私はこの瞬間のためだけにひたすら年月を重ねて生きて参りました。
一番あなたに伝えたかった感情たった一言すら口にできず、しかしそれ以外の言の葉を求められれば幾らでもと紡いで参りました。
そうすることであなたから遠く離れてしまった私が、僅かでもあなたと繋がっていられているように感じられればと。
それが私の唯一、あなたへの想いの証となるならばと。
長い長い時を経て、私はあなただけを待ち続け、凡庸と生き長らえてきたのです。
紡いだ言の葉は無駄にはなりますまい。
全てはあなたのためだと思えば尚更。

恋しく思っております。
お慕い申しております。
お迎えに参りました。

いいえ、言の葉はあなたに対すればいとも簡単に全て役立たずになります。

懇願するにも覚悟がいる。

どうか、どうかと膝をつき、
それだけは、それだけはと地べたに額を擦り付ける。
お願いですから、お願いですからと瞳に涙を浮かべれば、
必ず願いが叶うと信じているわけではない。
それでも懇願せざるをえないのは、
どうしたって諦め切れない生きる糧を奪われそうな恐怖が消えないからだ。

どうか、どうかと手を伸ばし、
それだけは、それだけはと無様に縋って離さない。
後生ですから、後生ですからと繰り返し繰り返して、
だけどそれで必ず許してもらえると思っているわけではない。
それでも切望せざるをえないのは、
他の何を身代わりに捧げてでも生きる理由をなくさないためだ。

そのためならばプライドの欠片すらドブに捨てるし、
そのためならば他に何もいらぬと沼に捨てる。
そのくらいの覚悟はとうの昔にできてしまっている。
ヘドロにまみれてのた打ち回り、
血反吐を吐いて無様な姿を晒しても、
それでもなくすわけにはいかない。諦めるわけにはいかないのだ。
唯一はとうの昔に決まっている。

懇願して切望して、それで唯一だけでも守られるなら。
もはやそれなくしては生きてなどいけない私は、
もはやそれなくしては生きる意味など見出せない私は、
生きながらにして死ぬことを、ただ死ぬことよりも何倍も恐れる私は、
どんな手を使ってでも。
どんなことでも。
なんでもしてやる覚悟なのだ。

会話文だけの「押し花うた」

「この間摘んできた花がもう枯れそう。花って命が短いね」
「命が短いからこそ人は花を愛でるんじゃない?でも確かに一番美しい瞬間を知ってる分、こうもあっさり萎れると少し寂しいものね」
「それじゃあ押し花にしよう。全部は無理だけど、確かにこの花が今ここで咲いていた証となるように。そして本に挟んでおこう」
「それじゃ忘れてしまうんじゃないの?」
「それでいいんだよ。忘れてしまおう。そうしてある日ふとその本を手に持った時不意に現れた押し花に、今の咲いている姿を思い出せるから」
「現在はそうやって思い出になっていくのね」
「そうだといいね」
「でも、押し花にすることで美しさは随分と奪われてしまうものね」
「花はどちらが幸せなのかな。醜く色あせながらも存在の証明を残し、一度は忘れられてもいつか思い出してもらえる瞬間を確保することと、そのまま土に還って次の花の養分になり、完全に忘れられてしまうことと」
「でもそれは私たち花ではない人間には関係のないことよ」
「そうだね。じゃあ、半分は押し花に。半分は土に還してあげようか」
「そのどちらも花が望んでいなかったとしても、そうしましょう」

優しさについての独白文

皆優しいいい子だと僕は思うんだ。
それぞれ顔や性格が違うように、優しさを表現するために選ぶ手段が違うだけで、その過程が理解できないってだけで結果をすら否定してはいけないと思うんだ。

皆とても優しいいい子ばかりだよ。
優しさを自分のためだけであろうと他人のためだけであろうと、即座に遂行できようと膨大な時間がかかろうと、結果、発揮できる、というのは紛れもない強さだと僕は思う。

別に結果論だけを重要視しているつもりはないよ。
過程だってもちろん大切だと思う。
だけど、過程だけを見ることで見失ってしまうことだって沢山あると思うんだ。
もちろん、それは逆でもいえることなんだけど。
だから僕はできるだけ過程も結果も見逃すまいと目を凝らしているんじゃない。
今見えないからって否定しちゃ駄目だよ。
結果は「今」とは限らないから。

優しくする、という行為を行うためには、実はとてつもない精神力と体力が必要なんだ。
そのことに気づかず自然にできる人もいれば、知っていてそれでも尚挑んでいく人もいる。
僕の周囲にいる人たちには後者が比較的多い気がするよ。
寂しい言い方をする人は優しさを偽善と呼ぶけれど、偽善を偽善と知りながらそれでも行える人は凄いんじゃないかな。

…うん、あなたは僕を騙されやすい可哀相な人間だと哂うけど、僕はもし本当にただ騙されているだけの浅はかな人間だとしても、それでもいいんだ。
それでも僕は、そうやって僕の目を覚まそうとわざと酷い言葉を選んで悪役にすらなろうとするあなたを含め、皆優しいいい子だと思ってるから。

ほら、僕の周囲にいる人たち、皆優しいいい子ばかりでしょう?
僕はその優しさに溺れてるんだ。
もちろん、溺れる、というからにはそれなりに苦しいし命がけだよ。
だけど溺れる、ということはその苦しみや危険と同時にこれ以上ないくらいの酩酊感や恍惚感を僕にくれるんだ。
だから僕はそのために目を凝らしてるだけだよ。
あなたは僕を少しばかり買い被り過ぎてるみたいだね。

本当にずるいのは、

ドアを開けた君は、いつものように朗らかに朝の挨拶をすることなく、どこか思いつめた表情で僕の目の前に立った。
何かに怯えるような肩はいつもより狭く縮こまって、視線は足元から上がる気配もない。
ぶら下がった両手は膝元で行き場を探して、布地を緩く、強く握っては離す。

僕はつい、何が怖いの。と問いかけそうになっては飲み込んで、君から言葉を発するのをひたすら待った。
愚問だと思ったからだ。
君が怯えるものと言ったら僕しかないことくらい、僕はおろか周囲全ての者にとっても当たり前のことだった。
君に怖がられるようなことをした覚えはないし、君にこんなに怯えられるのは僕の本意ではない。
だけど僕の心の構造と君の心の構造の違いはあまりに明確過ぎて、その違いは距離や溝の深さなんてものや、単に「正反対」という言葉で言い表すにも難しいくらいだ。

思いつめた表情のまま僕の前に立ち尽くす君に、いつものように逃げればいいのに。と慰めの言葉を口にしようとして、僕はそれも飲み込んだ。
幾ら僕が「僕の前から君が逃げてもちっとも傷つかないし、気にしないよ」と本心から言ったとしても、君は安心して僕から逃げることなんてできないと知っているからだ。
だけどこれでは君はわざわざ僕の前で怯えるためだけにここにきたことになってしまう。
それはあまりに君が可哀相だと思う。
どうしたら。どんな顔をすれば。どんな言葉を投げかければ、君は僕に対する恐怖心を少しでも和らげてくれるのだろうか。
僕は君に怯えられるたび、ぐるぐると考えるけれど。
何一つ思いつかずに目の前立ち尽くす君を眺める。

ひゅ、
君の喉が微かに鳴った。
胸の内側燻っていた何かを言葉にしようと、思い切って息を吸い込んだのだと分かって、僕は内心身構える。
俯いたままだった君が、今にも泣き出しそうな顔で僕の両目を真っ直ぐ見据えた。

「…僕は、…僕はずるいんだ。誰より。…君よりずっと」

先刻まで僕のつま先さえ見ようとしなかった君とは思えないほど、君は真っ直ぐ僕の両目を貫いた。
その両目は子供のそれのように透明で、逆にそうあることで奥が見透かせなくて怖いと僕は思った。

「一晩中考えてた。君に言わなくちゃと思って。僕はずるいんだ。だけど、どうか、…僕を嫌わないでほしい。好きになってなんて我侭言わない。ただ、僕のこと嫌いにならないで」

君に嫌われたくないんだ。
君に怖がられたくないんだ。

君はぽつりぽつりと言葉を零し落としていく。
両目は未だに僕の両目を貫くくせに、その真っ直ぐさ裏腹言葉は君の唇からゆらゆら頼りなさげに地面に落ちた。
先刻、君が俯いたまま見つめていたつま先の周囲に散らばるように。

…あぁ、そんな言葉、君に言わせたくなかったのに。

僕は内心深々と溜め息をつく。

「僕はずるいんだ」

繰り返す君は確かに、ずるいと思う。
僕が言わなければならなかった言葉を代わりに君に口走らせた上、それは僕の台詞だよと笑ってあげることもできない僕よりずっと。
もういいから逃げてよ。早く、今すぐ僕の目の前から逃げて、安心していつもみたいに笑っててよ。
そう慰めの言葉を口にしようとして、声が出ないことに気づいたのに飲み込むふりしてごまかした僕よりずっと。

「ずるくてもいいから、…怖がらないでよ」

君のガラス玉のような瞳から逃れるように視線をつま先に落とし、僕はそんな君よりもっとずるい言葉を口にした。

ずるいのはお互い様じゃない。
僕は君のこと好きだよ。

僕の心の構造は、伝えたい言葉を君に真っ直ぐ伝える術を知らずに口ごもる。
低く抑えた視界の端、僕を真っ直ぐ見つめていた君が僕と同じように俯き、微かに笑うのが見て取れた。

本当にずるいのは、どっち?

つま先一歩分のオーバー・ラン

限界まで引き絞った弓と矢。
胸中募り溢れ返りそうな感情全てを一点に集め、貫こうとするのは愛情か憎しみか。
それともそんなものたちとは全く違うものなのだろうか。

胸が反る。腕が戦慄く。引きつる喉に力を込めて、狙うは一点。
君のこめかみ。

中途半端に君を知ってしまったこの手が。この身が。この心が。
時々今をすら怖がって、前進しようとしたつま先を竦ませる。
全く何も知らずに生きていたら、君と出会うことなくまた違う今を迎えていたら、僕らは今以上に幸せだったのだろうか。
それともやっぱり、僕らが信じたいと願った通り、不幸せな結果に終わってくれていたのだろうか。
もう僕は、君がいない今なんてうまく想像することもできないほどの場所まできてしまっている。

君はいつだって半端な意思表示じゃ納得してくれない。
ただ「頷く」という行為すら、いちいち命がけとも取れるほどの全力の覚悟でもって行わなければならない。
少しでも気を抜けば、それはすぐに君に見破られる。
僕の両目を貫き、内側全てを抉り出すかのような鋭利な視線は、徹底的に曖昧さを許さない。

それならば、君に向けた弓矢を今、絶対に狙いを外さない覚悟を持って本気で放とう。

瞬きの一瞬すら惜しい。
その僅かな瞬間すら逃したくない。
最後の最後まで、君から目を離すまいと頬に力を入れる。

奇跡みたいだと思ったんだ。
奇跡のきらめきみたいだと。
中途半端に君を知ってしまったこの手が。この身が。この心が。
君の存在そのものを奇跡のきらめきと認知した。

矢よりも鋭く行き来する視線は、悪戯に触れれば瞬時に火傷してしまいそうなほど酷く冷たく張り詰めていた。
呼吸をするのも困難なほどの緊張感は、途切れた刹那に意識も魂もことごとく持っていってしまいそうだと思う。

ギリギリのラインで踏みとどまる僕と君の間。
僅か震えそうなこの手を離したら、限界まで引き絞られた矢はどのくらいの速さで君のこめかみに辿り着くだろうか。

ひとり、素足で立ち尽くす「今」。

あなたは酷い。
優しい瞳のまま、僕に迷うなと言う。迷わず殺せと言う。
一度では飽き足らず、二度も殺せというのか。
あの痛みを、苦しみを、悲しみを、もう一度味わえというのか。
僕に、またあなたを殺せというのか。

あなたは酷い。
目をそらさず、僕に早くと言う。早く殺してくれと言う。
一体どれほど僕に残酷な願いを投げつければ気が済むのだ。
僕の中から息づくあなた全てを抹消しろというのか。
僕に、またあなたを殺せというのか。

完全なる忘却が死とイコールで結ばれるとしても、たったそれだけのことさえ僕にはできない。
全細胞の崩壊を死とイコールで結ぶとしても、単に存在を確かめられなくなることを死とイコールで結ぶとしても。
僕にはもう、どんな死もあなたに捧げることはできない。
あなたを殺すことなんてできない。
僕はあなたが思うほど、強くなんかない。

人は死ねばそれまでだ。
死んだ者にとって天国も地獄もない。
それらは残された、生きている人間のためだけにあるものだ。
いつもどこかで見守っているだと?
きっと今頃天国で幸せに暮らしているだと?
そんなもの、生きてる人間が自分たちを慰めるためだけにつく嘘のようなものだ。
残された者たちが生きていくためだけに想像する幻のようなものだ。
僕にそんな嘘をつけというのか。
僕にそんな幻に縋れというのか。
あなたは全て知っている。
知っているのに。

あなたは酷い。
また僕にあなたを殺せと言う。僕の中からあなた全てを消せと言う。
僕に、俺の望みを叶えてくれと懇願する。
そうしてあなたが求めていた完全なる死を手に入れたとして、その次の瞬間から僕は一体どうして生きていけばいい。
あなたを一度ならず二度も手にかけた僕は、あなたの血液、肉片で穢れた両手をぶら下げて、一体どこに行けばいい。
あなたは問い詰める僕に答えもくれずただ、殺せと繰り返した。

あなたは酷い。
言葉にせずとも伝わる感情全てで、僕に愛してると囁く。愛していたと呟く。
だけどその言葉を絶対に口にし言霊として僕に伝えようとしなかったのは。最後の最後までしようとしないのは。
そして過去形にしてしまおうとすらするのは、今この瞬間につつがなく僕に殺されるためだ。たったそれだけのために、あなたは僕どころか自分すら騙して傷つける。
この手をまたあなたで汚せと。そしてあなたがいない世界にたったひとり、生きろというのか。
僕はあなたを愛することさえ許されないのか。

あなたは酷い。酷すぎる。
僕にはもう、どんな死もあなたに捧げることはできない。
あなたを殺すことなんてできない。
僕はあなたが思うほど、強くなんかない。
僕はただ、一生懸命ひたすらに、あなたを愛したいだけなのに。

今でも愛してるよ。
あなたの言葉は言霊になることもなく、だけど確かに、僕の胸を締め付けた。

ひとり、素足で歩く「今」。

ただ、「今」に慣れていくのが悲しい。
どんなものであれ繰り返し繰り返せば、この心もこの身も、こんなにも簡単に慣れていく。
あの頃僕はいつも「今」が壊れるその時に怯え息を殺していたけれど、どんなに残酷でいて痛々しい瞬間が僕らを覆い尽くしたとしても、「今」にさえこんな風に慣れてしまえるのだから、いつかその悲しみにも慣れてしまいそうで怖いと思っていた。
ただ、「今」に慣れていくのが酷く寂しいことのように思えていたんだ。

『大丈夫だよ』

君の声が優しく、木霊する。

懐かしい夢を見て、目が覚めた。
ふ、あまりの懐かしさにただ、笑おうとして失敗してしまった。
まだ薄暗い部屋にひとり。
君がいなくなって久しい、君の記憶残るベッドはあまりに。
君が残したぬるま湯に守られ浸かり続ける僕にはあまりに冷たい。

大丈夫だよ。
そこここに。君の記憶はちゃんと残ってる。
君を忘れることなんて、僕にはきっと一生無理なんだ。
君が僕の目の前から姿を消したことで、君は余計に僕の心の中に住み着いた。
分かっててやったんじゃないかと疑う瞬間もあるけれど、だけど君はどこまでも真っ直ぐだってこと、ちゃんと分かってるから。
だから大丈夫。

不安に飲まれることを必死で否定するために、確証のない祈りと共に君の口癖を口にして、僕は急いで微笑んで見せるけれど。
夢からふわり、蘇った儚い君の残像は、緩くかぶりを振って僕から目をそらしてしまった。

大丈夫だよ。
僕は君が好きだから。すごくすごく、好きだから。
いつでも僕は僕を君に預けるよ。そしていつでも僕は君を受け止める。
君は僕を守るって言ってくれたじゃない。
すごくすごく嬉しかったから、君が僕を守ってくれる代わりに、僕は君を守るよ。
どんなことが起こっても、何があっても、どれほど時間が経ったとしても、僕は君を完全に思い出なんかにしない。
だから大丈夫。

震える指先をとにかく黙らせるために、かたちもない願いと共に何度も君の口癖を口にして、僕はもう一度急いで微笑んで見せるけれど。
儚いまま確かな姿を現してくれない君はやっぱり、緩くかぶりを振って僕の目を見ようとしなかった。

君なしには生きてなどいけないと。
君がいない世界になど僕にはもう住めないと。
そう脇目も振らず盲目的に叫べたらどんなにいいかと。
君がいなくなっても尚、君が残したぬるま湯に守られ浸かり生き続ける僕は、時々無性に思うのだ。

大丈夫だよ。
僕は、大丈夫だから。安心して。心配しないで。
君がいたっていなくったって、ちゃんとこうして生きている。
笑えてる。ご飯も食べてる。移り行く日本の四季を感じ、君の記憶を手繰っては、決して薄れさせないよう夢に見る。
だから大丈夫。大丈夫なんだ。

気を抜くとすぐに溢れ出しそうになる激しい愛しさをぶつける場所がないことを知りつつも、僕はもう一度急いで微笑もうとして失敗してしまった。
ゆらり、夢のままの君は僕から目をそらしたまま儚く揺らいだ。

強ければいいと思ってた。
強くなれば全部が解決すると。
強くなろう、強くあろうと。ただがむしゃらに。
そうすれば君といられると思ってたんだ。
君に守られ、君を守り一緒に生きていけると。

…信じたかったんだ。

懐かしい夢を繰り返し繰り返し見る。
君の残像を追いかけて、まだ薄暗い部屋にひとり蹲る。
大丈夫。僕は生きてる。だから大丈夫だよ。
揺らいでしまった君の残像が消える前に、急いで目をそらして膝を抱えて呟く。
君の口癖を何度も何度も。
今にすら君を恋しがる我侭を、許してくれなんて請うつもりはないけれど。

ただ、「君がいない今」にさえ慣れていく自分が怖いんだ。

絡み合った糸と糸

あぁ神様。
僕にとってあまりに不釣合いなほど賢明で熱いこの手が、僕の手を引くそれが君だったら良かったのになんて。
そんな、それこそ不釣合い極まりない我侭を胸中ひっそり思ってしまった僕が。
僕に不釣合いなほど快活で力強い手に引かれ歩む方向が君と正反対の道だったとしても、もう二度とそんな想いに駆られませんように。

発端はいつも些細な気まぐれみたいなものだった。
だけど気まぐれ程度で伸ばした糸が、こんな形で絡まりあってしまうなんて誰が想像できただろう。
ただもつれただけなんだ、きっと。
だから丁寧に解いてあげればいいんだ、きっと。
解いて、放してあげれば、

…終わる?

終わって、くれるのだろうか。
終わって、しまうのだろうか。

もう僕には、いつの間にか知らない間に遠く、あまりに遠く離れてしまった君を。
もう一度たったひとり探し歩くような気力は残っていない。
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