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愛情表現方法その0

僕の中は酷く爛れて穢れている。
穢れは肉が腐敗しかけたような悪臭を伴って、ヘドロみたいにいつも奥深くに沈んでいる。
僕はその醜いものを、必死で必死で、隠している。
だから表から見えずにいるのだ。ただそれだけなのだ。
僕は君が思うほど素直に生きてないし、まして綺麗なばかりの存在なんかじゃない。

僕は時々心配になる。
僕の心の表に簡単に入り込む君が、ドブに落ちた時、底に沈んでいるヘドロがもわもわと水中乱されて身体中にへばりつくみたいに、うっかりいつもより深みに足を踏み入れ、僕の心の奥深くのヘドロに汚されてしまうんじゃないかって。
僕の内側奥深くに沈み込んでいるヘドロは、冷たく悲しすぎる。
一度触れたが最後、ヘドロは洗っても洗っても匂いも汚れも取れない。
そのまま皮膚から染み込み君の肉体、精神まで侵食していってしまいそうで、それは想像するだけで悪寒が走るほど怖い。
触れさせるわけにはいかない。気づかれるわけにはいかない。
波風立てないで。かき乱さないで。これ以上深入りしないで。どうか汚れないで。
そっと、静かにそこにいて。
そう、必死で願う。

『知ってるよ』

必死で隠そうと息を殺す僕に、彼は無邪気に笑った。
心臓がごとりと痛み、僕は叫び出しそうになった。
やめてやめて、口にしないで。忘れてたかったのに。彼が、唯一僕の奥底に眠っていたことなんて。
他の皆みたいに、表だけ見て。僕の汚いところを見ないで。
僕の中で眠らないで。汚れてしまう。
もう駄目だよ、入ってこないで。
怖い。怖い。
僕は殺されるよりそっちの方がもっとずっと怖い。

『抱いてて。僕はヘドロの中で眠るのが一番心地いい。真っ暗で冷たくて悲しくて、何もない。よく眠れるから抱いててよ』

彼はくつくつと喉を鳴らして笑う。
やめてやめて、もうやめて。僕は耳を塞いで蹲り、子供みたいに泣き叫びそうになる。

『大丈夫だよ、君のそれを知ってるのは僕だけだから。他の奴になんか教えない。僕と君とだけの秘密にしてあげる』

だから眠らせて。
彼は笑う。自分だけが知りえた僕の秘密を手に、嬉しげに笑う。
そこがどれほど穢れ爛れた場所か、彼は知ってるはずなのに。
汚れるよ。僕は息も絶え絶え呟く。
うん、知ってる。でも、元々これ以上どこが汚れたって変わらなかったから。彼は笑う。
僕だけが心地よく眠れる揺り篭が保障されるならそれでいいんだ。もう戻れないし戻りたいとも思ってないから。彼はただ、笑った。

いつか。
いつか僕は壊れると知った。
僕はある日突然何の前触れもなく、不意に心の隙間滑り込むようにして全てを知った。
だけど、壊れると知ったのがいつだったのか、僕はもう忘れてしまった。
そして、壊れる「いつか」がいつなのかも、分からなくなってしまった。
思い出そうと思えば思い出せるはずだけど、僕はすぐにそれを思い出そうとしなくなった。
いつか、そう遠くない未来僕は壊れる。彼も、他の皆も、君すらも守り切れずに全てを巻き込み共倒れる。
それだけで十分過ぎるくらいの絶望感だと思った。

でもできれば僕が壊れる前に僕を殺して。もしかしたら必ず負わなければならない皆の傷も浅く済むかもしれない。僕が壊れた時、内部が溢れ出て皆を汚してしまうかもしれないから、そうなる前に僕を殺して。僕は彼に懇願する。
いいよ、ちゃんと僕が君を殺してあげるから安心して。彼はやっぱり、笑った。

奇妙な安堵感と彼を内側に抱きしめながら、僕は思った。
僕の内側奥深くは酷く爛れている。
爛れは肉が腐敗しかけたような悪臭を伴って、ヘドロみたいにいつも奥深くに沈んでいる。
彼はそれをかき乱さずそのままそこへ沈み込んで眠る。
そこを揺り篭とすら呼び、冷たく悲しいばっかりのヘドロにまみれて、心地よさそうに安らかに眠る。
他の誰にも気づかれぬよう、ひっそりと。
そこで呼吸ができるのは、心地よいとすら笑えるのは、僕と同じようなヘドロを抱えた彼くらいだ、と思う。
ならば、せめて彼以外の他の誰も、これ以上僕の深層になんて入れなければいい。
それは例え君であっても言えることだ。
絶対に守ってみせる。僕のヘドロから君を守ってみせる。
絶対に、触れさせやしない。気づかせやしない。
汚させやしない。
思うたび爛れた内部がじくりと痛んで爛れを増すのも無視して、僕は固く決意しなおして顔を上げた。
醜いものを必死で必死で、君の目から覆い隠して微笑う。
壊れるその直前まで。僕が彼に殺されても尚そのまま。
せめて君の目に、このまま永遠にどこまでも醜い僕が映ることないよう。
せめて君にとってだけでも、綺麗な僕のままでいられるようにと。
無力な僕が君にしてあげられることと言ったら、悲しいことにそれだけなんだ。

これが僕の、最大の愛情表現方法。



---

好きだからこそ。そしてさほど遠くない未来の崩壊を知っているからこそ。
これ以上愛しいものを汚してしまわぬよう、本当の意味でなくしてしまわぬよう、穢れを隠して微笑む愛。
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お迎えは雪の日に。

思い出せない言葉がある。
それはそんなに昔に聞いたものではないはずで、
それはそんなに曖昧な台詞でもなかったはずで、
そんなに簡単に忘れられるようなものではなかったはずなのに、それでも何故か、思い出そうとするたび思い出せない、と途方に暮れる言葉だった。
君が僕に言ってくれた言葉だった。

その時の君の顔は覚えている。
僕の目を一生懸命、真っ直ぐ見つめて、とても思いつめたような顔をしていた。
かといって悲しそうだったり苦しそうだったりしたわけではない。
どちらかというと微笑みに近い柔らかさがあった。
優しい優しい、だけど凄く真剣な顔だった。
その時の君の手のあたたかさも覚えている。
僕の両腕をしっかり掴んで、微塵も揺らがないよう支えてくれていた。
少し指が食い込んで痛かったけれど、その力が僕を真っ直ぐ立たせてくれていた。
お陰で僕は寒さに凍えることも、不安に揺れることもなかった。
ただ、その時言ってくれた言葉だけ、思い出せなかった。

…探したぞ。
君が僕の背後、ぴりぴりと限界まで張り詰めていたものが途端崩れ落ちるみたいに、かたりとへたり込んだ。
糸が切れたマリオネットみたい、とどこかで思った。
ぜぇぜぇと肩で荒い呼吸をする君の、真っ赤になった唇から溢れるのは真白な吐息。
それは外気の低さを無視するように高熱を孕み、なのにどこか酷く痛々しく見えた。
僕は、僕がふらりとどこかに姿を消しても、必ずこうして必死で探して見つけ出してくれる君を、心のどこかで待っている。
探し出してもらえなくても、結局君の元へ戻るつもりでいつも出かけるのだけれど、そして君はそれを知っているのだろうけれど、
それでも毎回、僕がもう帰ってこないみたいに必死になって僕を探してくれる君を、僕は待っている。

君を困らせたいわけじゃない。
こんなにへとへとになるまで僕を探して、見つけた途端へたり込んでしまうほど疲れさせたいわけじゃない。
心配をかけたいわけじゃない。
ただ、思い出せない言葉がある。
君が僕に言ってくれた、大切な、大切すぎて思い出せない言葉だ。
だから僕はそれを探しに行こうとする。
結局見つからないのも分かってるけど、それはどこかに転がっているようなものではないことくらい分かっているけど、
だけど見つけたい、思い出したいと探しに出かける。
そのたび君の元へ自主的に帰る前に、君は僕を探し出してくれるのだ。
僕が何故こうしてふらりと出かけるのか知らない君は、何故出かけるのか僕を問い詰めたりしないし、当然決して思い出せない言葉を教えてくれたりはしないけれど、代わりに必ず僕を見つけてくれる。

未だ呼吸整わぬ君を、僕は棒立ちのまま見つめる。
君の頬は唇と同様、赤く染まっていた。
ぜぇぜぇ、だけど少しずつ治まりを見せ始める呼吸に、僕も少しほっとする。
君から少しだけ視線を上げれば、数時間前に僕が残した足跡は殆ど消え、君が僕に真っ直ぐ走ってきた乱雑な足跡だけがくっきりと見えた。
踏みしめられた雪原の、君だけの足跡。
ふわふわ舞い降る雪は、その君の足跡さえ消そうとしている。
僕は何故か雪の上、へたり込んだままの君の前にがしゃりとへたり込んだ。
マリオネットというよりは、ジェンガみたいだと思った。

ねぇ、君が僕を探さなくなる日は来るのかな。
ねぇ、僕が君の言葉を思い出す日は来るのかな。
ねぇ、僕はその言葉を捜し歩かなくても良くなって、ずっとずーっと、君のそばに居続けられる日って、来るのかな。

冷たく凍ったような唇を噛んだ。
きっと真っ青になっているだろう唇は、どのくらい強く噛んだら君みたいに真っ赤になれるだろうか。
ぐ、顎に力を入れたら、引き攣れる痛みと共に血が少し出たのが分かった。
どうしたらいい。どうしたらいいの。僕は。君に何を言えばいい。君が僕にくれた沢山に、僕は何を言って、どうしたら報いてあげられるんだろう。
君がくれた言葉も思い出せず、こんな、雪の日に。
それでも僕を探して走り回って、僕を見つけて駆け寄って、僕の目の前へたり込む君を待つ僕は。

僕は雪の上へたり込み、降り続けるそれすら気にせず雪まみれになる君の前で途方に暮れる。
なんだか泣きたい気持ちになったけど、涙なんか出てくれなかった。
僕、前に君が僕に言ってくれた言葉が思い出せないんだ。だけど、その時の君の顔も、手の力も、覚えてるよ。凄く凄く嬉しかったのも、覚えてる。
僕は詰まり詰まり、それだけ言った。
…安心しろ。
あの時みたいにどこか柔らかく、だけど真剣な顔をして僕の拙い言葉を黙って聞いていた君は、真白にふわふわ揺れる言葉で笑った。
思い出すまで何度だって出かけりゃいいだろ、そのたび俺が迎えにきてやっから。安心して、出かけりゃいい。
君は自分と僕の頭に積もる雪をおざなりに。だけどどこか優しい手つきで払い落とした。
その手は頬や唇と一緒で真っ赤になっていたけれど、僕の唇と同じくらい冷たく凍ってすっかり悴んでいた。
…帰ろっか。
僕は泣きたいのに、どうしても今、泣きたいと思うのに、何故かふにゃふにゃ情けなく笑ってしまった。

お迎えは夕暮れに。

ごめんね迷惑かけて。
ごめんね心配かけて。
ごめんねごめんね、
ごめんばっかりしか言えなくて、ごめんね。

彼は繰り返す。何度も何度も何度も何度も。
最初は謝りたい気持ちも分からんでもないしな、と思って黙って聞いていたけれど、いい加減苛々してくるほどに、繰り返す。

彼を探して探して走り回って、やっと彼の姿を見つけた俺は、探してる最中あれほど叫びたかった彼の名前を怒鳴る気力も失せて、へなへなその場にへたり込んだ。
彼は俺に気づいて慌てて走り寄り、何故か俺と同じくらい疲弊した雰囲気で俺の目の前にへたり込んだ。
そして、ひたすらうなだれごめんねを繰り返した。

謝ってほしくてこんなにへとへとになるまで探したんじゃない。
謝ってほしくてちょっと泣きそうになるほど心配したんじゃない。
だけどそう言ったところできっと、彼はまたごめんねと頭を下げるのだ。
彼は謝って許してもらおうなんて甘ったれた期待は持っていない。
卑屈になっているのとも違う。
ただ、悪いことしたら謝らないと。悪いと思った分だけ謝らないと。
きっとそんな風に思って今まで生きてきたのだろう。

人に迷惑をかけることを酷く厭い、心配をかけてしまうことを酷く恐れる節がある彼。
そのことを知った俺が、だからと言ってはいそうですか、なんて簡単に放っておけるわけがないじゃないか。
彼は放っておいて、なんて言わない。
だけど、助けてとも言わない。
ただ彼らしい、彼にしか通用しないような不思議な強さでもって、彼は自分がいるべき場所にいる。
さっき俺が見つけた時みたいに、すぅと音もなくそこにひとりで立っている。
彼はふわふわと柔らかでどこか儚い雰囲気なのに、ひとりで立つ強さをとっくに持って生きている。
俺が探さなくとも、心配しなくとも、彼はひとり生きていけるのだ。
これはこれで全然大丈夫だったりするのだ。
俺はその事実が時々無性にもどかしく、凄く寂しいと思う。

頼むからごめんね抜きで話をしてくれ。
放っておいたら日暮れても延々続きそうな謝罪の言葉に辟易した俺が、無様にへたり込んだまま溜め息をつく。
彼を探している最中どんどん募っていった胸の中詰まった何かを、ありったけの空気と一緒に吐き出して地面に捨てる。
うん、ごめ、
言いかけた彼は困ったような苦笑いを零して言葉を飲み込んだ。
俺が横目に睨んだのが分かったのだろう。
うん、でももう一回だけ言わせて。
彼は苦笑いのまま頬を指先で掻いた。

ごめんね、でも、ありがとう。
どうしたらいいのか、何って言えばいいのか分からなくて、他に言葉が思いつかないよ。
ありがとね、本当は凄く凄く、嬉しい。
探してくれて、迎えにきてくれてありがとう。

彼は苦笑いのままこちらに頭を下げた。
ぺらりと折れ曲がるようなその身体全部がこちらを向いて、俺のためだけにその言葉を選ぶ。
顔は見えない。だけど、彼が微かに微笑んでいるのが分かった。
じわり、胸の奥が何故か揺らいだのが分かって、内心俺は動揺した。

…どうでもいいけど。

俺はもごもご、口の中で言葉を捜す。
どうでもいいけど、…腹減った。帰るぞ。飯奢れ。
俺はごめんねを繰り返すことしかできない彼よりもっとぞんざいでどうにもならない荒い言葉をようやっと口にした。
うん。帰ろっか。
彼はそれでもほっとしたような、どこか嬉しそうな柔らかな笑みを零して頷いた。

謝ってほしくてその手を引くんじゃない。
謝ってほしくて心配するんじゃない。
一緒に帰る場所さえあれば、俺はそれでいいんだ、本当は。
何度だって探し出してやっから。何度だって心配してやっから。
慣れろ。悪いと思うな。あぁまたきてくれたんだ、くらいにしとけ。でも時々ありがとうくらい言え。言って、笑えばいいじゃないか。
俺は本当にそれだけでいいんだから。それだけで報われるんだから。
思えど、口から言葉になって出てきてくれない。
なんだか悔しくて、頬の内側を少し強めに噛んだ。

夕日が奇麗なんだ、ここ。
彼はふと、今思い出したかのように呟いた。
それに応えるために顔をあげたけれど、夕暮れはもうとっくに夜に塗り潰されそうになっていて、彼がひとり見ていた奇麗な夕日なんて見られなかった。
今度また彼を探す時は、もう少し早く見つけようと思う。
そして彼の言う奇麗な夕日を、俺にも見せてもらおう。

帰ろっか。
彼はもう一度俺にそう言った。
おぅ。帰るぞ。
俺はその時になってようやく、まだ俺も彼もその場にへたり込んだままだったことを思い出した。

愛情表現方法その1

他はどうでもいい。
本当にどうなろうと知らない。
周りはごちゃごちゃと必要以上に小難しい言葉でもって現象全てに名前と理由をつけようと足掻くけれど。
そんな無駄なことをうだうだいつまでも考えてる暇があったら、俺はひたすら君、という存在を全ての主軸に生きるだけだ。

君の願望は無茶苦茶だ。理想論にもほどがある。
青臭過ぎてむず痒い。耐え切れずにそんなの絶対に叶わない、無理だ、と怒鳴ってしまいそうになる。
だけどそのことを正確に君に伝える術を俺は知らない。
きっと言葉にしても君は納得なんてしないだろう。諦めたりなんかしないだろう。
例えそれが君自身を含め、君が守りたいと願う全てを壊わす元凶となろうとも、それでも抜け道があるはずだ、全てを守ることだってきっと可能なはずだと信じて君は足掻く。
そして俺は、どこまでも矛盾した君のその願いを叶えたいと思ってしまう。
その思いそのものがどこまでも矛盾していると知っていて尚。
君の願いを叶えれば叶えるほどに、さほど遠くない未来、君が壊れることを。そして俺自身が壊れることを知っていて尚。

『いつか全て壊れるの?それは決まっていたことなの?僕らはずっと一緒にいられない?絶対に?最初からそのこと知ってたの?』

知ってて僕と一緒にいるの。君は傷ついたような、今にも不安に飲まれそうな自分に怯えるような顔で矢継ぎ早に俺を問い詰める。
お前が俺に名前と存在の意味をつけたんじゃねぇか。俺は君の切実な質問の答えにならない返事を返した。

君の喜ぶ顔が見たいとか、君を悲しませるもの全て許さないとか、君を守りたいとか、
できれば俺だけを見て、俺だけを頼りにしてほしいとか、
君以外の何が傷つこうが死のうが関係ないとか、
いつか必ず壊れてしまうのなら、せめて今だけでも君の願いを叶えたいとか、
でもそんなことしたら結局は君が苦しむとか、
苦しむ君は見たくないけど、そうなったらそうなったでその時折君を苦しめる原因を丁寧に排除していけばいいとか、
例えば君を苦しめる原因が自分になってしまったとしてもそれは仕方ない(その時はもちろん周囲もろともだけど。だって俺だけ壊れて他のが無事なまま君のそばにあるなんて絶対ごめんだ)とか、
そんなの望んでないと君は叫ぶだろうけど、でも君が壊れることは俺の望みじゃないとか、
だけど誰よりそばにいたいとか、
君の矛盾がいつの間にか君の願いを叶えたがる俺の矛盾に成り代わり、ぐるぐる脳裏を駆け巡ってうるさいから、俺は拳を強く握り締める。

『この世に絶対悪なんてないよ。誰かを救えば必ず他の誰かが泣く。それが分かっててするならどうぞ』

臆病故に突き放すことでしか愛情表現できない彼が皮肉にこちらを見下すようにして笑うけれど。
それあいつの前で言ったら殺すぞ、俺は斜めに睨んで威嚇する。

『お前が揺らぐな。どっちにしろ結果は変わらない』

達観しているが故に腕組みを解けず愛情表現できない彼が低く唸るけれど。
だからってお前みたいに黙って指咥えて見てるだけなんて無理だ、俺はまた斜めに睨んで威嚇する。

『馬鹿みたい。どうせいつか壊れるものなのに』

無邪気な邪気を振りかざし相手を無理やり引き寄せることでしか愛情表現できない彼すら俺を哂うけれど。
いいから黙ってろ、威嚇することも疲れて首を振った。

『僕が弱いから駄目なんだよね、なら僕が強くなればいいんだよね、そうしたら壊れないで済むんだよね、そうだよね、そうだって言って』

君は焦燥に駆られて俺の腕を掴む。
必死なその顔に何と応えていいのか分からず、俺はつい目をそらして黙ってしまった。
これでは厄介な歪みを帯びた愛情表現しかできない他の奴らとそう変わらない。

俺は馬鹿だ。
歪んでいるとは言え、彼らのように一定の考えに基づいて、距離を作ったり見守ったり引き寄せたり、行動を定めることができない。
その時折衝動的に感じたままに発言し、動くことしかできない。
自分でもよく分からないことだって多い。
だから時々言ってることとやってることが、君の願望と同レベルに無茶苦茶だったりする。
ひとつだけ確かなことは、君、という存在を全ての主軸に俺は今、生きている、ということだけだ。

いつか必ず君は壊れる。
それは、君が強くなろうがなるまいが変わらない。
見え透いた未来に俺は歯軋りしながらそれでも、君の願望を少しでも。今だけでもと叶えようと足掻く。
そうして日に日に容赦なく近づく君が壊れる日。
その時がきたら俺は、君が少しでも無事にいられるよう、周囲もろとも粉々に壊れるだろう。
君を守り切れずに。君に守られ切れずに。
こんなの望んでない。君が泣き喚く日を、一分一秒でも先延ばしするために足掻く。

いかないで、そばにいて、壊れないで、お願いだから、お願いだから、ねぇ、
知ってたならどうして、なんで僕と一緒にいてくれたの、答えてよ、いっつもはぐらかしてばっかり、酷いよ、

君が口走るだろう言葉も、その時君が浮かべるだろう表情も、もしかしたら零してしまう涙の温度も、俺は知ることもできずに壊れる。
君を思い出にもできず、それでも後悔なんてしないだろう。
君なら俺を忘れずにいてくれるとどこかで確信しているから。
たったそれだけで俺は、君のためだけに悔いなく壊れてしまえる。
他はどうでもいい。本当にどうなろうと知らない。名前も理由もいらない。君だけいればそれでいい。
本気で、言い切れる。

「ある意味俺が一番厄介かもな…」

呟けど。
なんの話?拾われたくない呟きほど真面目に拾ってしまう君に俺は、なんでもない、と首を振る。

これが俺の、最大の愛情表現方法。



---

好きだからこそ。そしてさほど遠くない未来の崩壊を知っているからこそ。
結果に怯えながらも、「君」のために自分も周囲も犠牲にすることをすら厭わぬ愛。

千夜一夜4

せめて空っぽになったんだったら良かったのにね
今まで意識無意識関係なく
その身に詰め込んだ記録も記憶も全部全部
ゲームのリセットボタンを押したかのようにただゼロに戻るなら

だけどもしそうできてしまったら君は今頃どこで何をしているのだろう
たったひとりで生きていくことだって余裕でできるほどの強さと
ヒトという存在の恐ろしさだけを手に
もうたったひとりでなんて生きていけないほどの儚い弱さも
ヒトという存在のあたたかさも知らず
今どこでどうやって
自分を覆いつくす孤独の寒さに気づかずひたすら生きているのだろうか
そう思うと僕は何故か
僕までひとりこの場に残されたかのような喪失感を覚え
そんな愚考に囚われた自分を詰った

君は後悔していないと言う
君はそれなくして生きていけないとまで言う
それは嘘偽りなく真実そう思っていることなのだろうと思う
疑う余地なんて欠片もなかった
ならば僕はただ
それを糧に生きる君の背中を見つめるしかない
想像するだに喪失感すら覚える愚考を投げ打って
先へ先へと走る君の背中を無心で追うことしかできないのだ

彼の眼前広がるは
今まで意識無意識関係なく
その身に詰め込んだ記録も記憶も全部全部
粉々に砕け散った破片だけ
それを必死でかき集めては
鋭利なそれらを恐れずむしろ愛しげに胸に抱き
僕らに見えないところでひっそり口付けすら落とす彼
そのせいで彼の指も手も胸も首も唇も
直視も適わぬほどの傷だらけ
彼は自分の傷に気づかずそのまま傷だらけの姿顔で
それでも僕らに無理やり笑う
僕らはそれに応えようと足掻いては
へらり
先日彼にするなと言われた困り笑いを零してしまう
そんな日々をぎりぎりで生き抜く

だから幻でもいいと思ってしまったんだ
だから夢でもいいと思ってしまったんだ
だから
だから
嘘でも罠でも騙されたいと
どうか彼もろとも騙されてくれと
切実に思ったんだ

迎えにきたよと
一緒に行こうと

願ってやまなかった光が
傷だらけになってまで笑う彼の
その
手に

届いた時は



その子のために紡ぎ続ける千夜一夜の物語がようやく終わった刹那
これが僕の最終話だよ
僕は笑った
その子は微笑み首を振り
あなたのお話はこれからまだまだ続くよ
僕の癖を真似るようにして言った
その笑顔はどこまでもどこまでも幸福そうで
僕は頷き
彼らの背中を追う決心を再度固めなおし
全身全霊を込めてつま先で思い切り地面を蹴った

幸福そうに笑う彼らと一緒なら僕は何度でも
千夜一夜を乗り越えて
どこへでも
どこまでも
いつまでも
走っていける
追っていける

生きて
いけるから

夢じゃないんだよね
僕は呟く
何を言ってるんだ寝ぼけてるのか
そう言って彼が笑った
その笑顔は懐かしく愛しいばかりの柔らかさで
どこまでもどこまでもしあわせそうで
何故か僕の涙腺を悪戯に緩めるのだった

新しい千夜一夜物語の始まりの時

失くした指輪を探す旅

例えば君が俺の目の前から煙のように
ゆらり
ある日突然儚く消えてしまったら
正直なところそんな想いに駆られ怯える暇すらなかった
それだけ俺は脇目も振らず
ただ
ただ生きることができていたということだろう

ある日突然君は
君を失くすことをすら考える暇なく生きていた俺の目の前から生々しい気配だけを残して
幻と疑う隙が僅かでもあればどれほどいいかと思うくらいありありと痕を残して
揺らぎようのないほど強く鮮明な記憶を残して
行ってしまった

それはあまりに突然過ぎて
ただ生きることだけに精一杯になっていた俺には
どうしてこうなったのか
こんな結果をのみ俺たちの間に呼び込んだものの正体がどんなものだったのか
今どう振舞えばいいのか
これからどう生きていけばいいのか
ちっとも
欠片も分からず途方に暮れた

せめて心の準備をさせてくれたら良かったのにと残酷なことを平気でする君を恨んだりもしたけれど
どんなに前から知らされていたとしてもきっと俺はこの結果に対して
俺が
そして君が望むような振る舞いなどできなかったのだろうと思い直し
自分自身を含め
様々な状況に追い詰められ
こうするしかもう手立てがなかった君の悲しいまでの優しさに気づいてまた
呆然とするだけだった

優しい君はもう俺の目の前にはいないというのに
あとからあとから溢れ出しそうになるほど込み上げる感情いちいちの
責める言葉も謝罪の言葉も
そして感謝の言葉も何ももう
俺よりきっともっと傷つき孤独に震える君に届ける術もない

君とはもう会えない

もうひとりの俺が置いてけぼりをくらった子供のように
呆然と立ち尽くして悲しいだけの言葉を呟く

君とはもう会えない

もうひとりの俺が帰り道もなくした迷子のように
絶望感ばかりでその場から動けず寂しいだけの言葉を繰り返す

分かってる
分かってるんだ
分かってるから頼むから
頼むから黙ってくれ

君とはもう
会えないんだ

千夜君を夢見て必死で越えても
一夜一夜辛うじて息を殺し眠ったふりをしても
君とはもう会えないことを知ってる
分かってるから

『待っていろ。いつかまたお前の元に戻ってくる』

君が俺に残した言葉が結果的に嘘になろうとも
俺はどこかで信じ続けて生きていく
それがどれほど叶う見込みも足掻く手立てもなく
途方もなく続くばかりの旅路となろうとも
いつか君が残していった道筋を辿り続けて
君を見つけ出す

「…待ってろ。いつか絶対に追いついてみせる」

低く唸る呟きはもう
眩暈がするほど遠く離れた君には届かない
そんなことくらい分かっているけれど

もはや君すらをも失くした俺にとって
君という存在そのものだけが
唯一
俺の生きる意味



Another side of “千夜一夜”

愛情表現方法その3

ただ、泣かないでいてくれたらいい。と思う。
痛まないで悲しまないで苦しまないでいてくれたらいい。
笑ってくれてたらそれだけでいい。と心底思うのだ。
君の存在はたったそれだけであっという間に鮮やかに周囲を温める。
俺はいつもその奇跡のような瞬間に立ち会うたび言葉を失い、あまりの心地よさにうつらうつらと揺らいでまどろむ。
君とそっくりな柔らかなまどろみの向こうは、君と正反対と言っても過言ではないほど、呆れの溜め息しか出ないほど騒がしかったり荒々しかったりもするけれど。
君はそれでもいつも穏やかに微笑むから、俺はただ黙って腕を組む。

君はいつだって笑っている。
どんな時もいつもひっそり静かに。嬉しげに、楽しげに、優しく柔らかく、包み込むようにして笑う。
どんなくだらないことだっておざなりに放り投げることもせず、穏やかに。そして丁寧に、いつも真っ直ぐ手に乗せる。
その君の不器用な優しさは今までも、そしてこれからも君を面倒事に巻き込んで、時に苦しめ、時に困らせる。
そしていつか君自身を壊してしまうだろう。
きっと君はその危険も、それを危惧し見え透いた未来に密やかに怯える俺たちをも知っている。
だけど君はそれでもやめない。
微笑みを浮かべ、いちいち丁寧に手のひらの上に乗せて抱く。
抱いて、丁寧に、身体の中央真っ直ぐに届く声で俺たちの名前を呼んでくれる。
君は強い。誰よりきっと、強くて優しい。
だから俺はできるだけ簡素に。それでいて君に真っ直ぐ届くよう心がけて、君の名前を呼び返す。
君の呼び声を真っ直ぐ受け取れるよう心がけて、君を見つめる。
返事を返すにも真剣勝負だ。

『どうせいつか壊れんだから、今の内にもっと必死になればいいのに。回りくどい奴だな』

彼は苛々、だけどどこか脱力するように言うけれど。
俺が君に対して抱く感情と彼らが君に対して抱く感情はきっと違う。
だからこれでいいのだろう、と俺は目を閉じる。

生憎俺には心の奥底から信奉する神も仏もない。
だから、どうか君をあらゆる危険や悲しみや苦しみから守ってくださいと頭を下げたり手を合わせるような行為をしない。
この目で見定めたこともない、神や仏だとかいう曖昧な存在にそんなことをして貴重な時間を無駄に潰してしまうくらいなら、自ら動いた方が断然早いし分かりやすいと思うのだ。
俺が信奉するとするなら、もはや君以外考えられないのだから。
俺はせめて君に背を向けて、正面からぶつかる強風避けにでもなれればそれでいい。
その目にゴミが入らなければいい。
君が幸せであればなんでもいい。と思う。

君はいつかきっと壊れるだろう。
自分以外の全てを守ろうと、俺たちすら守ろうとして、俺たちもろとも壊れるだろう。
どんなに君を守りたいと思っても、俺たちは君を守り切ることができず、共に過ごす今すら危うくさせるだろう。
今が壊れたその時、それでも。
ただ、泣かないでくれたらいい。と。
痛まないで悲しまないで苦しまないでいてくれたらいい。
笑ってくれてたらそれだけでいい。と。
このままだと本当に君もろとも全員総崩れで壊れることを知っていて、それでも力づくで止めようとも思わない俺やなんかは、願うのだ。

時々。
本当に時々だけれど、…時間よもう少しだけ。もう少しだけ、今を許してくれと、神や仏よりもっと曖昧でいて抗えぬ対象にすら祈ってしまいそうになることがある。
ひたすらに君の幸せを願い、そしてできることならもう少し、君のそばにいたいと。君の幸せそうな微笑みをこの目で見届けたいと無茶を願う。
それと同時に、全部が。俺たちもろとも君が壊れた時のその姿をも見てみたいと、真逆でいてもっとも叶わなぬ無茶を願ってみたりもする。

『…お前もある意味厄介だ』

彼は力の抜けた馬鹿面を隠そうともせずに溜め息をついた。
なんでもいい、笑っててくれたらそれだけでいい、俺は口には出さずに目を閉じる。

これが、俺の最大の愛情表現方法。




---

好きだからこそ。そしてさほど遠くない未来の崩壊を知っているからこそ。
矛盾していても、一歩下がった位置からどんな経過も結果も全て見たいと願う愛。

愛情表現方法その4

だるそうに投げ出された手が、薄く開いては閉じる瞼が、疲れてるよ、と。もう眠りたいよ、と僕に言う。
だけどそんなの知らない、と僕は見て見ぬふり。知らんぷり。
誰より周囲の変化に気づける君を知っている。
自分より周りを優先してしまう君の、柔らかなくせにどこか頑固な痛い優しさも知っている。
求められれば。そしてその求められるものを自分が持っていれば、何でも差し出してしまうその手は、閉じた弱さからくるものではなく、ひたすら広い強さからくるものだってことも、知っている。
だからと言って、どうにかしてあげたいわけじゃない。
そんなの知らない。
僕はただ、そんな君の痛々しい優しさに付け入るだけだ。
卑怯?卑怯の何が悪いのさ。
あてどなくゆらゆらうつろう視線の先に、僕以外何も受け入れないで。

『うぜぇなお前。見れば分かるだろ、疲れてんだよ。優しさのひとつも見せてやれよ』

彼は眉間に皺を寄せて心底面倒くさそうに僕を睨むけれど。
これでも珍しく譲ってやってるんだから。本当に苛々してるんだから。
余計なことは言わないで。
アンタは余裕ぶって優しくしてればいいじゃない。
あとから後悔したって知らないんだから。

本来、すでにこんなの僕の性分には合わない。
僕はいつだって勝てる勝負しかしない。
勝率は高ければ高い方がいい。100%に近い方がいい。確実な方がいい。
スリルなんて必要ない。最初からそんなもの、求めてないのだ。
僕はいつも限界までレベルを上げてからようやくラスボスに挑む。
これ以上ないくらいレベルが上がっているから、敵からの攻撃を受けてもそれほどこちらは痛まない。
だけど敵も無駄に強くて、こちらから攻撃しても大きくは痛まない。
じりじり、こちらは目一杯の回復アイテムでベストの状態を保ちながら、無駄に時間をかけてラスボスを嬲り殺すのだ。
その時間はあまりに不毛でどうでもよくて。
だけど確実に相手が弱っていくのが分かって、僕は楽しくなる。
一撃を与えるたび、どんどんラスボスのことが大好きになる。
これ以上ないくらい残酷な気持ちになって、必殺技もろくに使わず嬲る。
嬲って嬲って、結果、倒す、というより、殺す。
その最後の一撃だけに、今まで残しに残してきた余力全部を注ぎ込んで殺す。
大好き。思わず口走る。
ニィ、口端が歪むのを抑えるのは大変だ。

僕は我慢なんてしない。欲しいものがあったら欲しいだけ手に入れるし、飽きたら捨てるし、勝率が低ければ上げるだけだと思っている。
疲れてる?もう眠りたい?そんなの知らない。
今、今。
今欲しいものは、今手に入れる。
卑怯?残酷?それの何が悪いのさ。
ねぇねぇ、無邪気な子供のふりして君の手を引く。
どうしたの、君が微かに困ったように笑うけど、その目に僕だけが映るためなら僕は、なんだってするってこと、忘れないで。
待ってて。
追い詰めて追い詰めて、絶対に手に入れてあげるから。
ずっとずーっと僕とだけ一緒に遊ぼう。
最後はちゃんと大好きって言ってあげるから、安心してていいよ。

『…お前も厄介だな』

彼は本当に鬱陶しそうに僕を睨む。
僕はひらひら手を振りそれを払っては、邪魔したら許さないから、と無邪気さを装って笑って見せた。

これが、僕の最大の愛情表現方法。




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好きだからこそ。そしてさほど遠くない未来の崩壊を知っているからこそ。
『今』だけを重要視し、その手に爪を食い込ませ引き寄せ閉じようとする愛。

季節が僕を呼ぶ頃に

雨に濡れた。
それはそれは盛大に。
僕はこっそり誰にも気づかれぬようひっそり、今朝自宅から出る時玄関先で無表情の上貼り付けた笑顔の仮面をずらして眉間に皺を寄せた。
ひとり最寄駅から歩く帰路。今なら誰にも見咎められることもないだろう、と踏んでのことだ。
ばらばらと激しい音を立てて雨粒が半透明のビニルを叩く。
傘を差している分まだ頭や肩は無事なのだけれど、何を慌てているのか勢い付き過ぎた雨粒がアスファルトの上飛沫を上げるものだから、靴も靴下もパンツの裾も、それどころか膝下全てがぐっしょりだ。
これでも慎重さを意識して、いつもよりずっと小さな歩幅でゆっくり歩いているというのに。
僕の両足はそんな僕の努力を哂うかのように、刹那でも意識を緩めるとすぐに帰路に焦って前へ前へと進もうとする。
傘の恩恵に与れる範囲を完全に無視する。
ばしゃり、薄暗い道では見つけにくい水溜りを踏んで我に返った。

僕にとって玄関から一歩でも出たそこは、ただ溜め息をつく暇すら必死で目を凝らさなければ見つけられないくらい騒がしく荒々しい戦場みたいなものだ。
毎朝玄関のドアを開ける前に顔の真上に正しい処方で貼り付ける仮面は息苦しくてかなわない。
皮膚呼吸どころか普通の呼吸すらしにくい。
それに、視界も狭めるから自由がきかなくて苛々したりもする。
しかしだからと言って外したままで戦場を歩けるわけがない。
素っ裸で敵だけがわんさかいる地雷原に突っ立ってるようなもんだ。
以前、その比喩はどうかと思うよ、と笑われたことがあるけれど、僕はこの例えが一番僕にとって的を得ていると譲らなかった。
だから僕は外ではいつもつい早く歩く。
景色や状況を楽しんでいる場合ではないのだ。
そんな余裕、いつも欠片もない。
だから僕はいつもつい無意識に帰路を急ぐ。急いで、焦る。
気をつけてないと、焦るあまり足がもつれそうになるほど、何の心配も不安もなく溜め息がつける安全なだけの場所に逃げ込もうとする。
仮面を外し、床に叩き付けて踏みにじりたい衝動に駆られる。

雨に濡れた。
それはそれは盛大に。
だけど半透明なビニル傘のせいで頭や肩だけは無事だ。
そのことが余計に僕にとって苦々しい事実だったりもするから困る。
どうせ膝下までぐっしょり濡れてしまうのなら、いっそ傘なんて閉じて全身びっしょり濡れてしまいたいと思う。
前髪滴る雨のしずくがどれほど心地よく虚しいものか、僕は知っている。
雨は仮面の内側まできちんと入り込んで満遍なく濡らしてくれる。
苦しいのは雨のせいだと勘違いさせてくれる。
だからどうせなら、と思う。
だけどどうしても、と思い止まる。
いっそ周囲の目も地雷も自分も、靴が駄目になることも玄関が濡れることも何もかも、ちっとも気にせずいられたら。
好き勝手に、思いつくがままに振舞えたらどんなにいいだろうか。
それが許される季節はとっくに背後遠くに行ってしまっていることも知っているけれど、僕はつい未だにそう思う。
季節はいつもいつも、そばにいる時その存在をこちらに無理強いするくらい主張してくるくせに、いなくなる時は何も言わず、気づかれぬように息を殺して行ってしまう。
だから僕はいつもいつも、季節がいなくなって随分経ってからようやく、いないことに気づいて困ってしまう。

薄暗い帰路の途中、雨のせいでぼんやりけぶって光る自販機の前に立ち止まる。
傘を肩と首に引っ掛けて、元々少なめに入れてある財布の中身全てをいちいち丁寧に飲み込ませ、同じボタンを押し続けた。
ボタンが光る内はまだいい。そう思った。
ちゃりんちゃりんと音がした。
あと50円あったら財布の中身が空っぽになってくれたのに、と僕は歯噛みした。
傘を肩と首に引っ掛けたまま自販機の前にしゃがみ込み、財布の中身殆どと引き換えに落ちてきたものを鞄に詰め込んだ。
あと50円足りないせいで押し返された僅かな小銭を指先で捕まえようとしたら、それは湿度で浮腫んだ指から逃れ、雨に濡れたコンクリートの上くるりと転がり倒れて止った。
何かに似ている、そう思ったけれど、その「何か」が何だったか思い出せなかった。
もう一度それを指先に捕まえ、財布ではなくポケットに押し込んで帰路に戻る。
どうせなら全部濡れてしまいたいと思いながら、そんな簡単なことすらできないで、僕は傘の柄を強く掴み、足掻くように歩幅をいつもと同じくして帰路を急いだ。
ばしゃり、今度はわざと水溜りを踏んだ。

僕が季節を呼ぶ前に、季節が僕を呼ぶ。
それは時々無茶苦茶な力でもって僕の膝下だけをぐしょぐしょにして、僕が呼び返す前にどこかへ行ってしまう。

愛情表現方法その2

僕の目の前、無邪気に笑って差し出すその手のひらの上。
幾億もの罪深いほどに甘いだけの真実よりも、ただひたすらに辛辣なだけの偽りの言葉をひとつだけ、乗せてあげよう。
重ねる罪は少なければ少ないほどいい。
君の肩にこれ以上重荷を追加する必要などないのだから。
背負うなら僕だけで十分でしょう?
僕は元々、僕という存在自体が嘘みたいなものなのだから。
嘘だけで構築された幻みたいなものなのだから。
嘘は真実のように確固たる形を保たずに、いつか煙みたいに全てを巻き込んで有耶無耶に。不意に目の前から消える卑怯なもの。
だけどそんなこと知らないままでいてくれるといい。
嘘に騙され傷ついた瞳でこちらを睨み付けて、思いつく限りの罵詈雑言を叩きつけてくるといい。
その方が、君の欲しがるものを知っていて差し出せない、どこまでも卑怯で臆病な僕にあつらえ向きだ。
きっと優しい君はそんなことさえしてくれないのだろうけれど。

否定の言葉はできるだけシンプルかつ刺々しく、をモットーに。
絶対零度を保つことをお忘れなく。

『どうせいつか壊れてしまうんだから、わざわざ今壊そうとしなくてもいいだろうに』

彼は苦く顔をしかめるけれど。
壊れるまで待ってなんかいられないよ、と僕は首を振る。

いつになるかも知れないその時まで、誰も何も知らないままだったら良かったけれど。
知ってしまった僕にはもう、これ以上積み上げる勇気なんて欠片も残っていない。
時間を重ねるたび。
想いを重ねるたび。
それらの共有を繰り返すたび。
容赦なく増える積荷は君の肩の上。
僕に見せる無邪気な笑顔が、いつかその重みに耐え切れなくなってしまったらどうするの。
それからじゃ遅すぎるんだよ。
甘い真実は罪深く、あまりに重たい。
一切の汚れの見えない笑顔が欲しがる手のひら、乗せてあげられるものならなんでも幾らでも、と思ってしまうけれど。

今は。
そしてこれからも。
君にとって罪にもならない嘘を積み上げ、その肩から今までの積荷すら外してあげよう。
どうせいつか壊れてしまうものなのならば。
どうせいつか壊れてしまうものなのだからこそ。
いっそ、最初から後戻りがきかないほど真実なんかで構築してしまわなければいい。
そうすれば崩壊の痛みも悲しみも、味あわせずに済む。
するり、通り過ぎるだけの風のように、何の抵抗も感じず遠のくことができる。
飛ぶ鳥あとを濁さず、ってね。
僕は飛べやしないけれど。

壊れたその時は、どうかできるだけ早く僕を嫌いになってね。
思い出すのも嫌になるほど強く激しく。
そしてできるだけ早く僕を忘れるといい。
僕だけが、今の僕だけが君をきちんと覚えておくから安心して。
僕はこんなの、慣れっこなんだ。
知ってる。
君が、僕を嫌う日なんてこないことも。
だけどいいんだ、できるだけ嫌って、いつか忘れてくれればそれでいいから。
無理はしないでいいから。
そんなの僕が絶対にさせないから。
嘘だけでできた僕にさえ、柔らかく微笑み名前を呼んでくれた君を。
僕は嘘だけで守り抜く。

『…厄介な奴』

彼は苦く苦く吐き捨てた。
僕はあなたが思うよりずっと賢くも強くもないよ、僕はふてぶてしさを装い笑って首を振る。

これが、僕の最大の愛情表現方法。



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好きだからこそ。そしてさほど遠くない未来の崩壊を知っているからこそ。
結果的に必ず負う傷を少しでも減らそうとわざと突き放す愛。

千夜一夜3

なんて顔してるの
今初めて気づいたかのように
僕の隣立つその子が言った
その声はどこまでも戸惑いと悲しみに満ち
彼をきつく責めるようにも
優しく宥めるようにも聞こえた
言われた彼は刹那目をしばたかせ
俺は今どんな顔してる?そんなに酷い顔してるか?
自嘲的に微かに笑んだ
思わず僕は彼に後悔してるのと愚問を投げかけた
彼が肯定してくれるわけないと知っているけれどそれでも
肯定してくれることを祈りながら問うた
僕の不相応な切実さが滲んだ質問に彼は微かに目を見開いた後
また自嘲的な微笑でもって否定した

後悔なんかするものか
全力疾走の先に残った答えが今なのだから
あいつが残した唯一が今なら
これだけはどうしても後悔するわけにはいかないだろう
そんなことしたら全部が無駄になってしまう
無駄にするわけにはいかない
それなくしてもう俺は
生きることすらかなわないのだから

自分をも騙し騙し
彼は笑った
もう無理して笑わなくていいのにと僕の隣立つその子が呟けど
じゃあお前らもそんな困ったように笑うな
と一蹴されて終わってしまった

あの人は笑うだろうか
彼が心の奥底から幸せそうに笑っていたあの頃をどうしても懐かしく思っては祈る僕らを
そして今にすら願う僕らを
ひとりこの場に残されて
広げた手のひらの上にあったものだけを後悔しないよう
必死で自分に言い聞かせる彼を
蘇る幸福の記憶を払い捨てることも抱きしめることもできずただ
無防備に素足のままで歩く彼の肩先を
そしてそれを見つめては
毎回今初めて気づいたかのように僕の隣立つその子が丁寧に慎重に彼を責め宥め
それ以上に寂しさを募らせることを
その寂しさがあまりに透き通った痛みだからと
僕は毎回その子のために
あてどなく終わりの見えない千夜一夜の物語を毎晩語り聞かせて半ば無理やり眠りを呼ぶことを

いっそ笑ってくれたらどんなにいいかと
不相応な寂しさを抱く僕を

追求を許さない彼の頑なな背中が
僕らを置いて先へ先へと進もうとする
彼の目にだけ見える愛しく恋しい面影だけを
彼は追いかけ走り続ける
悲しいくらい正しくなぞるようなその道の先
いつか彼とも会えなくなりそうで
僕は
呼べない名前を飲み込んだ

いっそ最初から何も知らなかったら良かったのだろうかとふと空しい想いに駆られるけれど
あの時確かに彼は幸福そうだったと
それこそ後悔してはならないことだったと
僕は我に返って悔やむのだった

『あいつのことを頼む。もしあいつが間違えた時は、お前が正してやってくれ』

そう僕に言い残して行ったあの人に
僕では不相応だと
あなた以外は不相応だと
あの時どうして言えなかったのだろう

千夜一夜2

ものすごく久しぶりに彼が眠っている姿を目にした時
僕は
あぁやっと眠ってくれたと少しばかり安堵した
あの日から彼は僕らの前で一切寝顔を見せなくなっていた
それは彼らしい不器用な強がりの表れ
時折陰る横顔に
僕らが気づく前に彼は隠そうとする
疲弊や睡魔は僕らの視界の端でちらちらと見え隠れを繰り返し
ただ
強くあること
笑うことを努める痛々しさだけを微かに苦く残した

以前彼は時折不満げに口にしていた
痛みや疲れや睡魔をあいつはいつも俺たちから器用に隠してしまう
俺はあいつのそういうところが嫌いだと
その時僕は僕も同感だと笑った
そしてその彼の台詞を今できることなら彼にぶつけてしまいたいと思う
彼はあの人が残した軌跡を丁寧に辿るようにして僕らの視界の端でひっそり溜め息を吐く
あの時彼が感じた切ないもどかしさを等しく正しく僕らにオーバーラップさせる
彼はそうやって生きることしかできない
彼の情愛はそんな形でしか発露されない
どこまで不器用で天邪鬼なのだろう
そしてどこまで一途で一生懸命なのだろう
僕はひっそり苦笑する

ものすごく久しぶりに彼は今
僕の目の前で眠っている
完全に力が抜け切れていない不器用なままの彼の寝顔は
眉間に寄ったままの皺の寂しさばかりを僕に知らせてしまう
もう彼はあの人がいないとただ穏やかに休息を貪ることすらできないのだと

どうして
どうしてあの時彼はあの人を引き止めなかったんだろう
愚問と分かっていて尚僕は思う
何度も何度も何度も何度も
答えなんて返ってこないと知っていて尚
もしもあの時
あの時彼が全力であの人を引き止めていたら
あの時彼が自分も連れて行ってくれと懇願していたら
…今頃一体どうなっていただろう
きっとそれでも結果は変わらなかったのだろう
彼はそのことを知っていたからあの時引き止めることも懇願することもしなかった
見ている僕すら痛むほどの彼らしからぬ物分りの良さで
だけどもしもと僕は何度も思う
僕らしさを見失うほどの物分りの悪さを無理やり押し出して

あの子のために繰り返す千夜一夜の物語と同じくらい丁寧に
慎重に息を殺して僕は祈る
せめて彼が見る夢が
どこまでも満ち足りた幸福に抱かれて
このまま目覚めなければいいのにと思うほど温かいものであればいいのにと
せめてものすごく久しぶりに僕の目の前で眠るなら
彼の眉間に刻み込まれた深い寂しさがほんの少しでも安らいでくれたらいいのにと

深いコーラルブルーの海の底
投げ入れた華奢な指輪を探すように
彼はあの人を探す
眠りの最中にあっても
求める手は彼の両脇に力なくぶら下がることを知らないまま
必死に呼ぶ声は音となって響き渡ることも知らないまま
募るばかりの恋しさを
僅か伝える術も知らないままで
探せど探せど見つけられず
いつしか帰る道すらなくしてもかまわないと言い出しそうなくらいに

『あ、迷子発見』

いつの間にか僕の肩越し
眠る彼を覗き込んでいたあの子が微かに笑った
僕はその言葉の徹底的なまでの儚さに無性に泣きそうになってしまい
それを我慢するためには
くくく
喉を必死で震わせ笑って頷くくらいしか手立てがなかった

どうか
どうか今すぐ彼を迎えに来てください
あなたを探してたったひとり
真っ暗闇の眠りの底すら彷徨い歩く彼を早く
あなたの光で照らしてください
迎えにきたよと
一緒に行こうと
その手を彼に伸ばしてください
きっと届く
あなたの手が彼に届かなかったことなんて今まで一度だってなかったのだから
あなたが伸ばした手を彼が取らなかったことなんて
その間にどのような紆余曲折があろうとも
結局今まで一度だってなかったじゃありませんか

寂しい苦しい悲しい愛しい
こんなにもただひたすら直向きに恋しいというのに
彼は決して弱音を吐かずに前を向く
そのことが余計に僕らの胸を切なさばかりで締め付ける
こんな酷いことがあっていいのだろうか

彼は僕らの目の前ひと時の休息にもならない眠りを貪る
彼が誰より何より求めるものを
あの人は誰より何より知っていることを
僕と
僕の隣にただ立つこの子に未だありありと知らしめながら

千夜一夜を乗り越えて
いつか暗闇の中あてどなく伸ばし続ける彼の手に
あの人の光溢れるあたたかな指先が触れますように

本当に泣きたいのは彼の方だっていうのに
それでも彼は一切僕らに涙なんて見せないでいるっていうのに
僕は
どこまでも自分勝手にまた不覚にも泣きそうになっては慌てて唇を強く噛んだ

千夜一夜

彼は誰より何より孤独を愛していて
誰より何より孤独に怯えている

たったひとりで生きていくことだって余裕でできるくらいの強さを持っているのに
もうたったひとりでなんて生きていけないほど儚い弱さも持っているのだ

相反するそれらは限りなく平等な数値でもって
彼の心の中で危ういバランスを保ち続けて呼吸をする

ヒトという存在の恐ろしさも
あたたかさも
彼は誰より敏感に
そして正しく
知識としてだけではなくきちんとその身を持って理解している

僕にだってそのくらいは分かるのだから
きっと天邪鬼な彼がそれでも真っ直ぐに手を伸ばすしかないほど激しく求めたあの人は
とっくの昔にそんなことくらい見抜いていたはずだった
あの人は彼をひとりの孤独から救い上げ
そしてまた
彼をひとりにして行ってしまった
その行為に一体どんな理由や意味があったのか
彼とあの人の間に一体どんな感情のやりとりが成立していたのか
彼の心とあの人の心がどのように離れることを選択せざるをえない方向に向いたのか
僕は未だに何一つ知りえないままだけれど
両者が離れることを望んで離れたわけではないことだけは
僕にも分かってた

僕は時々口を滑らせてしまいそうになる
気づいたもの全てを言葉にしてしまうことがどれほど幼稚で愚かなことか
誰より何より知ってるはずの僕はそれでも
寂しさや辛さを無理やり飲み下し平気な顔を装って生きる彼に
余計な言葉をかけてしまいそうになる

僕は彼を真似て無理やり飲み下し平気な顔を装う
誰より何より孤独を愛し
誰より何より孤独に怯える彼が
ひたすらに生きるその背中を眺めながら

彼はいつかあの人に再び会えるのだろうか
彼とあの人が同じ血を吐くような想いで馳せる祈りは
千の夜を越えても叶わないのか
それともあと一夜で叶うのか
誰より何より答えを欲して生きるのは
もしかしたら僕より彼より
彼をひとりの孤独から救い上げ
そしてまたひとり孤独にして行ってしまった
あの人なのかもしれない

知ってるよ
君が
あなたが
どれほど何を糧に必死で生きているのかを
喉が潰れてしまいそうなくらい大声を張り上げて呼びたいその名も
腕が引き攣れて痛んでも尚求めてしまうほど触れたいその手も
行き場のなさに悶え苦しみ噛み締めた唇から溢れた血液の苦味も
息を止めてなければ今にも零れてしまいそうな涙の気配だって

だけど僕は飲み下す
平気な顔を装って
何も知らないふりをする
そのことが賢く正しいことかどうかなんて
きっと彼にもあの人にも僕にも
分からないままなのだけれど

『孤独は空腹や寒さに似てると思わない?』

僕の隣
同じように彼の背中を見つめていた子が不意に呟いた
その言葉はあまりに無邪気で
かつあまりに辛辣すぎて
僕は苦笑してはその子のための新しい千夜一夜の物語を口ずさむ

せめて彼とあの人と
この子と僕が
一夜一夜を無事に生き抜けるようにと

カウント・アップ

それはまるで、どこまでも延々と。連綿と続いていきそうなカウントアップ。
僅かでも冷静に考えることを放棄してしまったら、うっかり永遠に続きそうな気がしてしまう、平和でいて甘美な罠だ。

永遠の定義を「定めのない時から、定めのない時まで」とするなら、このカウントアップは確かな始まりがあった時点で当てはまらない。
始まりがあれは終わりも必ずあることを、重々理解していて尚、それでもうっかり誤解してしまいそうになる。
微かに浮つくような気配に苦笑。

また一年経ったことを思い知るカウントアップ。
見て見ぬふりをしたって、忘れたふりをしたって、気づかないふりをしたって必ず訪れる瞬間だ。
別段、そこまでして拒絶する気もなく、むしろ率先して指折り数える。
そのたび同じ祈りを口にしては目を細め、静かに息を殺す。
騒がしさはむしろ邪魔だった。

ひっそりと。
ただひっそりと。
だけど確実に。
ひたすら続いていきそうな、未だ終わりの見えないカウントアップ。
一体どこまで自分が指折り数えられるだろう。
思いながらも口ずさむようにして祈る言霊だけが、なんら変わらずそこに降りていった。

できることならもう少し。
毎年重ねた祈りを編むようにして、指折り数えるカウントアップ。
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