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力の加減が分からない。

今にも。
濡れた指先をつるりと滑り落ちるようにして行ってしまいそうな感覚の意図を、いっそ握り潰してでも、と咄嗟に強く掴む。
ずっとずっと大切に守ってきたそれ。
守るという大義名分を冠に、触れもせず近づきもせず見守ることしかできなかったそれ。
力の加減がいつも分からなくて、少しでも触れてしまったら。
それどころか、近づこうとした時の空気の揺れだけでいとも簡単に潰れてしまいそうで怖かった。
完熟した桃のような儚さと、眩暈がするほどの甘い香りに怯えたのだ。

守りたかっただけなのに。
ただ、この目に映すことだけでも許されるならそれで良かったはずなのに。
ずっとずっとそれだけで生きていけると思っていたのに。
この愚手は滑り落ちるようにして行ってしまいそうなそれを恐れ、その恐怖は潰れる恐怖を刹那凌駕した。
瞬間的にでも「いっそ握り潰してでも行かせたくない」と思い、我を忘れて手に力を込めてしまった自分が、何より誰より恐ろしく、おぞましく、悲しかった。
臆病者の手は結局、大切に手のひらに包むことを夢見ながら叶えられず、潰すことしかできなかった。

今にも。
どこまでも薄く脆く粉々に割れるようにして行ってしまいそうな感情の城壁を、いっそ決壊させてでも、とわざと強く払う。
ずっとずっと大切に守ってきたそれ。
だけどそれよりももっと守りたかった感覚の意図を強く握り締めてしまった罪を断罪しようと、握り潰してしまった残骸残る愚手で城壁すら強く払う。
そんなことで贖罪がかなうような罪などないというのに。
力の加減が分からなかったんだ。
そう言い訳を口にしたところで。
血を血で洗うように、罪で罪を洗おうとしたって。
愚手に絡みつくものは元には戻らないのに。

へたり込む。
へたり込んだそこには、もうずっとずっと触れるどころか近づきもできなかったくらい大切に守ってきた感覚の意図も、感情の城壁も、何も残らなかった。

守りたかっただけなのに。
呟けど。

『…馬鹿だな。見くびるなよ。俺はそんなに柔じゃない』

笑う声がただ、汚れた愚手の表に舞い降り落ちる。
ただそれだけは潰してしまわぬよう、無様な手のひらはそのまま開いておくことにした。
例えこの手が彼にとって、見るに耐えられぬほど穢れた恥だったとしても。

守りたかっただけなのに。
だけど何も残らなかったここに、せめて彼の笑う声だけでも舞い降り落ちてくれるなら。
へたり込んだそのまま。残骸に汚れた愚手を垂らしてそれでも、まだもう少し、生きていけそうな気がした。

『あ~ぁ~、そんな汚しやがって。お前何やってんだよ』

力の加減が分からないんだ。
呟くと、彼はただ、笑った。
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卑怯さと残酷さの定義(メモの処分)

人がこの世に生まれ出でる前から体内に常備品として抱く「寂しさ」は、目に見えない分だけ露呈することを恐れるもの。
「寂しさ」はぽかりと空いた穴によく喩えられるけれど、もしかしたら穴と言うよりもっと確固たる姿を持った異物に近いものなのかもしれない。
それは目に見えないから、穴にせよ物にせよ、不安定で不規則であることには変わりないから、結局どちらかに決定しなければならないものではない。
「寂しさ」をどう紛らわせたり、慰めたりするかが問題だ。
他の何かで適当に補おうとしたり、勝手に違うものに変えてしまおうとしたりするのは、ただの我侭であり、ただの卑怯な逃げの手だ。
だけど悲しいかな、人がこの世に生まれ出でる前から体内に常備品として抱くものは、「寂しさ」だけではなく、「我侭」であったり「卑怯さ」であったりもする。
それが人だと真理を笑えば、心裡は人の内にだけ。と人が笑った。

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彼は優しい。
彼は優しいから、優しすぎて残酷な時がある。
彼は優しい。
彼は優しいから、優しすぎるから、冷たいその手が曖昧で、こんなにも求めているのに不意に恐怖に駆られて拒否したくなるほど、叩き払ってしまいそうになるほど、残酷だ。
彼は残酷だ。
彼は残酷だから、残酷すぎるから、必死に生きてるし余裕をなくさないしで、酷く人間くさくて温かい。
手が冷たい人は心が温かいのだと嘯く人が笑うけれど、それはもしかしたら本当なのかもしれないと時々思う。
それだけ彼の手は冷たく曖昧で、優しい。

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古い古い、言霊でした。

理由

内側に抱いた身体はいつもあったかいよ。と君が笑った。
内側から抱いた身体はいつも幸福の匂いがする。と僕は応えた。

悲哀は尚深く。
絶望は尚冥く。
いつも不意に僕らを覆い隠してしまいそうになるけれど。
自分の限られた視界では到底把握しきれないくらいの広い世界がどれほど容赦なく塗りつぶされようとも、僕らがそれぞれ二本の足で立ってる場所さえ見えるなら。
君が笑ってくれるなら。
きっと大丈夫だよ。僕は何度でも言ってあげられる。

僕が君から離れない理由は、きっと大丈夫だよ。そう僕があてどなく口走る無責任な言葉を、君が受け取ってくれるからだ。

any more

覚めることのない夢を、ずっと見ている。

それはそれは、途方もなく長すぎる悪夢。
それは夢じゃないよと夢の中にしか存在できない人が僕を笑う夢。

目覚めの時はこない。
この夢が覚めることはないのだ。
勝手な意思だけで無理矢理内容を180度変えることも、勝手に終えることもできない。
ならば、今見ているこの夢と、現実との境はどこに見い出せばいいのだろう。

全ては簡素にしつらえたフェイクの殻越し。
もうずっとずっと、覚めることのない夢を、見ている。

ツール

山よりうず高く積み上げた言葉だけじゃ心全部が通い合うわけないことくらい、知っているけれど。
それでも知りたくて。
それでも知ってほしくて。
持ってる限りの「言葉」を総動員して、必死に受け止めようと、必死に伝えようと。
繰り返し繰り返し足掻いて足掻いて、理解で距離を縮めては、見落としていた距離に気づいて呆然とすることを繰り返す。

僕達はいつもいつも、僕達の間を埋めるツールが「言葉」だけではないことを忘れてしまう。

明日の雨は何色だろう

ぼたりぼたりと空から降ってくる、大きな大きな雨粒。
これ以上ないくらいのその粒の大きさと重たさが、元々空圧だけで潰れかけてた身体の真上、トドメをさそうと堕ちてくる。
だけど叩きつけられた皮膚の表面はいつもこれ以上ないくらい乾燥していて、見る者を困らせるほどペラペラの貧相なものになっていたから、ぶつかるそれすら恵みの水になった。
トドメどころか、まさに地獄に仏だったのだ。
その結果を悔いたか否か、こちらには知りえないことだけれど、雨は容赦なくぼたりぼたりと重たい音を立ててひっきりなしに降っていた。
あまりの突然の出来事に慌ててしまって、上手に吸収できずに噎せたりしながら、それでも乾ききった皮膚は水を呼んだ。
雨粒をこれ以上ないくらい限界まで育て上げた空の望みは分からなかった。

呼ぶ。水を呼ぶ。
その雨粒が何を抱いているのかも平気で無視して、水を呼ぶ。
何色に染まりたかったんだろう。
そんな些細な願いも知らないままで、水を呼ぶ。
無様に外を駆けずり回り、両手を精一杯空へと伸ばして、水を呼ぶ。
どんなに必死になって吸収したところで、ぶくりと醜く膨張し、いつしか抱き込みきれずに溶け、決壊して溢れてくれるわけでもないのに。
内側に限界まで溜まった水に溺死することなんてできるわけがないのに。

これ以上ないまでに育った大粒の雨の攻撃的な落下はもちろん、カラカラに乾ききりひび割れた皮膚にはとても痛かった。
だけど痛みよりも呼びたくなるほど飢えたこちらにとって、やはりトドメにはならずに恵みとなった。

呼ぶ。水を呼ぶ。
集めてしまえば雨粒は雨粒でいられなくなると分かっていて、それでも集めてしまいそうになるほど。
ひたすら無我夢中で水を呼んでいたら、いつの間にか水の中に何を呼んでいたのか、自分でも分からなくなってしまった。
最初は水が抱くものを呼んでいたはずなのに。
空が望むことも、一粒一粒が何色に染まりたがっているかも、分かっていたはずなのに。

飢えが全てをモノクロに染めた。

呼ぶ。水を呼ぶ。
幾ら今必死に呼んだとて、一夜越えてしまえばどうせまた見る者を困らせるほど侘しく乾くだろう腕で。

明日の雨色を、呼んでしまう。

ぼたりぼたりと空から降ってくる、大きな大きな雨粒。
これ以上ないくらいのその粒の大きさと重たさが、内側に何を抱いていたとしても。

探す。

どくり、どく、どく、
自分の鼓動の音と振動に呼ばれるように目が覚める。
生きている証であるそれはいつも、僕を夜から朝へ誘い、また夢でさえあなたに会えなかった寂しさを思い出させる。
あなたに会えずに目が覚めたそこはもうすっかり朝になってしまっていて。
僕がひとり生きるべき時間を思い知る。
その時間に、あなたの気配ひとつ、僅か感じることすら叶わない。
あなたを探すには、窓の外はあまりに眩しすぎる。

毎夜毎夜、夜の闇に紛れてしまえば、こんな僕でもあなたに会いに行ってもいいような錯覚を覚える。
今の僕には、あなただけを欲しがって夜を彷徨うことなんてできないと分かっていて尚、それでも僕は夜を探す。
あなたを探す。

気だるさに投げ出していた腕を、ベッドの上、ずるずる引き寄せ噛み付いた。
肉を引き裂く獣ほどの鋭利さも持ち合わせられなかった糸切り歯では、この腕だって食い千切れない。
せいぜい皮膚の一枚を切り裂き、溢れた僅かな血液を舐めるくらいだ。
この程度の痛みなんかじゃ駄目だ、と思う。
あなたを見つけるにはまだ足りない、と思う。
無残に食い散らかされた獲物の破片よりもっとずっとそれは、無様な苦味を口内に残すだけだった。

まだ。
まだだ。
まだ夜には。あなたには果てしなく程遠い。

醜く爛れるような胸の内側。
朝日を嫌う夜の闇に似たそこに、切実に焼き付けたあなたの残像を探す。

僕は、あなたがいない朝なんて、簡単に捨てられるはずなのに。

あなたを知ってしまった指先が、こんなにもあなたを探しているのに。

本当に切実なのだ。僕は本当に切実に、あなたを探している。
なのに、この切実さをどう言葉や態度に表せればいいのか、僕は分からず途方に暮れる。
毎朝、毎夜。
どくり、どく、どく、
自分の鼓動の音と振動に呼ばれ、僕はそのたびあなたを探す。

一体いつになればあなたを見つけられるだろう。
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