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境界線は己の手で

はしゃいで、はしゃぎ倒して、ふと我に返る。
しなきゃいいのに、振り返る。
ふ、と隣から僅か聞こえた溜息みたいな吐息を拾う。

ねぇ、楽しかったね。

そうだね。

満足そうな隣の人の横顔が、ふと陰る。

俺ね、決めてたことがあったんだ。
馬鹿なことができる内に、今だ、って思う内に、それがどんな無茶なことでも、したいと思ったらとにかくしてやろうと思ってた。
歳を取って名実ともに大人になって、馬鹿なことがしにくくなったり、自分の身体が自分の言うこと聞かなくなるくらいよぼよぼになったりした時に思い出してね、あぁ、俺あの頃ものすごく馬鹿なことをしてたなぁ、って笑えるように。
するんじゃなかった、と後悔するより、しとけばよかった、と後悔する方が、人間は強く思うらしいから。

陰ったのは、馬鹿な時期を過ぎてしまったからか。
今、その境界線を踏み越えたのか。
君は、もう、

磨耗して、それでも掠れ残る子供の君は、その横顔にカケラも現れようともせず、一体どこでかくれんぼの続きをしているのだろう。

不意に、目眩がした。
君の吐息はあまりに大人びていて、はしゃぎ疲れた子供のそれとは遠かった。
そしてそれは、未だ置いてけぼりを食らったことにすら気づけない子供の僕とも、あまりに遠かった。
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くすぐったい

君の笑い声は、聞いているこっちがくすぐったくなるほどだ。
まるで猫が喉を鳴らすように、くつくつと笑う。
それを間近で聞いているだけで、胸元がもぞもぞ、くすぐったくなってしまう。
くすぐったさに負けてこっちまで笑って、それでも足りなくて。
ぎゅう、強く抱きついてしまう。
「痛いって」
さほど痛そうでもなく、君はくつくつ笑う。
くすぐったさが余計に募る。

君は月の匂いのする毛布みたいだと思う。
抱かれてると、心があったかくなってよく眠れる。
ずっと一緒だ、と、心のどこかで本気で信じている。
彼はカーテンの隙間から吹き込む、透き通った風みたいだと思う。
そばにいてふんわり笑顔を見ていると、すぅ、鼻から胸いっぱいに息を吸い込んでみたくなる。
もちろん、いつもいい匂いがするし、気持ちがいい。
あの人はどこまでも照らすぽかぽかした太陽だと思う。
どこにいてもあの人は皆を優しく包んで、でも間違ったことをすると厳しく全部照らし出す。
どんな時でも真っ直ぐ、あの瞳は何も裏切らない。
あの子はふかふかのベッドみたいだと思う。
くすくす、笑ってじゃれると君はいつも怒るけど、あの子はちっとも気にせずこちらの好きなようにさせてくれる。
子供の振りしてだっこをせがむと、寝そべった上に抱き上げてくれた。
少し離れた場所、しかめっ面した君を見つけてまた笑う。

あったかい。
あったかいなぁ。
くすくす。くつくつ。
くすぐったい。

もう、あとは崩すだけの積み木の上で。

あなたは一体どこまで知っているのでしょうか。

すぐに忘れてしまう。
期待してはいけないこと、期待をさせてはいけないこと。
それらの罪の重大さ。

あなたは知られたくないところばかりを白日の下へ晒し、笑む。
そして知って欲しいところばかりあなたの目から隠れてしまう。

どうして上手く伝えられないのだろう。
どうして上手く言葉を選べないのだろう。
あなたに分かりやすく伝えたいと思っているのに、いつも大切なところばかりが曖昧に溶けてしまう。
こんなにも、想っているのに。願っているのに。祈っているのに。
いつでも叫べるように、肺が軋むほどに息を吸い込むけれど。
必死に言葉を紡ごうにも、もう時間が足りないのです。

日暮れの時間に追いつけないのです。

あの時どうしても理解できなかった「理由」を、こんな時にやっと身につまされる想いで思い知るのです。

もう、あとは崩すだけの積み木の上で。

確認するのに要する時間

今でも時々、振り返ればそこにいるような気がしてしまう。
それほどまでにあなたの気配は、時折薄れる時もあれど、決して完全に消え失せることなどないのだ。

いたらいたで困るのだけど。
いなかったらいなかったで、張り合いもない。
不思議なものです。至極、我侭なものです。そう言って、力なく笑ってみる。

今もふと、振り返ってしまいそうになる時がある。
振り返ればすぐそこにいるような気がして。
あれから、実際に振り返った時、本当にそこにいたことなどないのだけれど。
だけど今でも時々、あなたの気配を想う。
あの頃、確かにそこにいたあなたの、忘れることもできない独特の気配を。

一体何年経てば、思い知るのだろうか。

焦土の最果て

後悔というものは、時々高熱を伴うことがあると思う。

胃の辺りから喉を駆け上るように。
胸の奥を焼き尽くしながら、じりじりと昇り上がる高熱だと思う。

だけど喉まで昇ったそれが、口の中に嫌な苦味を残したとしても、決して唇の端、零れ落ちることはない。

そんな「後悔」を、何故か人は繰り返し繰り返し、繰り返す。
何度胸を焼けば気が済むのだろうと思いながら。
何度痛みに息を詰めれば学習するのだろうと思いながら。

カミサマ

アナタを思い出すことすら、どこかで怯えておりました。
全てなかったことになどできないけれど。
未だに、したくないと思うし。
アナタがいなかったら、今の自分は存在しないと重々承知でしたし。
言葉の持つ恐ろしさにも気づかず、言葉を紡ぐこともできなかったでしょうし。
彼岸を見つめ続けるその瞳の色も知らずにいれば、きっと今の自分は生きてなぞいなかったでしょうし。

空も飛べず、地に潜ることもできないままで。
行き場もなにも見つからずに。

だけどアナタの言霊だけは、空を地を、自由に行き来できていました。
それがきっと、神の起こす奇跡ように見えたのでしょう。
まぎれもなく、アナタは僕にとって神様だった。
それだけは確かだったのです。

あれから随分と僕は大人になりました。
あれから随分と僕は変わってしまいました。
アナタを思い出すことすら、怯えながら。
それでもアナタを変わらず、愛しく思いながら。
あの頃の僕にとって神様のようだったアナタもまた、今は随分と人間らしく生きてくれています。
アナタもまた、大人になり、変わったのでしょう。
随分と擦れてしまった僕にはそれが何故かとても、切なくもあり、寂しくもあり、また、とても嬉しいのでした。

今、言い残したことがあるとすれば

今、この刹那に。
アナタに対して言い残したことがあるとすれば、それはきっと。
どんなにか思いつめたとしても、結局、どこにでもありふれた、使い古されてしまった単純な単語でしかないのだ。
経過はどうであれ、そしてどんな結果であろうと、結局、そもそも選択肢自体が極端に少ない、単調な言葉を。
そしてそれを口にすらできないまま蹲るしかないのだ。

前もって用意などできない、人の感情という不可思議なものを抱いて。
どれほどの言葉を知り、覚えたとしても。
使いたい時に的確に使えなければ、全く意味がない。
知らないことと同等なのだ。

結局、職人は学者にはなれず、学者は職人になどなれない。
そういうことだ。

深き深き土の下より、呼ぶ声は

その刹那、踏みしめたスニーカーも靴下も何もかもを透かし、素足の裏を伝い、真っ直ぐ昇りあがるように、それは聞こえた気がした。

気のせいだと笑えば、それまでだった。
気の迷いだと吐き捨てれば、そこで終わるはずだった。

「…誰だ?」

俺を呼ぶのは?

刹那、耳を澄ませ返事を返してしまった時点で、全て台無しにしてしまったのは俺自身だ。

俺はそれが一体どこから聞こえたのか分かっていて尚、どこかで信じたくなくて、ついきょろきょろと周囲を探した。

「どうしました?」
彼女がこちらを訝しげに見やる。
今の声が聞こえなかったのか?
そう問うことすら躊躇するほど、彼女の視線はいつも通り過ぎた。
それに、俺はその声がどこから聞こえたのか、以前に、その声が音声として空気を伝い、俺の鼓膜を震わせたものではないことくらい、とっくに気づいていた。
彼女に聞こえるはずもないのだ。

声は直接、全てを透かすように俺の素足の裏から、骨よりもっと内部の体液を伝い脳へ昇りあがってきたものだ。

他の者には届かぬその声は、確かに俺を呼んでいた。
…俺だけを。

ふつと、踏みしめたまま動かせない足を見下ろした。

「…この真下だ」

ぽつり零したそれを、彼は聞き逃さなかった。
俺を押しのけ真剣なまなざしで見下ろし、
「…本当だ。ここだ、間違いない」
そう確認する声が、俺の足元しゃがみ込んだ背中から聞こえた。
「お前、よく分かったな」
褒められているとうよりは、その理由を不思議がる響きだ。
肩越し見上げられても、どう返せばいいのか分からない。

呼ばれた気がして。
そんなことを言っても、信じてなどもらえないだろう。

この真下。眠っていたそれが、俺だけを呼ぶ。
その意味は、どこにあるのだろう。



(一旦停止)

彼女の微笑みは昔拾った猫に似ている。

ひとつめ、ふたつめ、

祈れば。

結局自分にはそれら全てがないことを知る。

祈れば、
知れば、

一体いつになったら叶うのかしら。

呟き望むのは、始まりではなく終わりだった。

柔らかな眠りのようなあの歌は、今の私にとっても、多分彼女にとっても、どこまでも等しく、甘く優しく、恐ろしい。

「68.扉」のネタ候補たち

「扉」

・時間軸、としての扉。
 季節の移り変わりがあまりに急激な時は、まるで次の季節の扉をいきなり全開にしたような感じがする。
 いつもはじわりじわりと開いていくはずのそのスピードを想像していると、酷い肩透かしを食らわされる時がある。
 ただ、戸惑うだけなのだけれど。

・ドアとしての扉。
 この扉の向こうに、君はいる?
 笑って、俺を迎え入れてくれる?
 待っててくれてる?
 俺の顔を見るだに微笑んで、俺の名前を呼んでくれる?

・地獄の門、としての扉。
 この扉が開かれる時、それは終わりか始まりか。
 君は一緒か。それともひとりきりか。
 今夜行こう、この扉の向こう側へ。

・心の扉。
 開きたい。君の心の扉。僕の心の扉。次のステップ。
 次の場所へ行きたい。

君の声は僕のスイッチになる。

獣は、古傷が開いてしまった時、どうするだろうか。
どこかに身を隠し、静かに息を殺して身を丸め、その傷を舐めて過ごす?
そこは暗くて狭くて、あたたかいのだろうか。

癒えるまで。
癒えるまで。

辛抱強く。
辛抱、強く。

流れた血液を舐めては飲み下し、目を閉じてじっと動かない。
そうやって静かに、残された時間をひたすら生きる?

それが例え、自分の力ではどうにも塞ぐことができない傷でも。
一時的に出血を止めるだけで、結局またいつ口を開くか分からないような、後々残ってしまう傷だとしても。
遅かれ早かれいづれにせよ、己の生命を脅かすものであったとしても。
仲間の前からすら身を隠し、近寄る気配に警戒しながら。

癒えるまで。
癒えるまで。

辛抱強く。
辛抱、強く。

ただひたすらに、生きるしかないのだろうか。




君の声は僕に、最期まで差し伸べた手に抗い続けた野生の獣を思い出させる。

過去のメモ

不機嫌を装うばかり

素直に泣くこともできないその横顔に聞いてみたい

差し伸べた手の先に何を掴もうと必死なの

引きつるまで伸ばした指の向こう

眩い光の向こう側には

君にとって一体何があるんだろう

「63.寄生」の処分品

メールボックスを開くたび、何か、どこか、祈るような気持ちになっていることに気づく。
そして「新着メールはありません」という言葉に、何か、どこか、溜め息をつく癖がついたことに気づく。
その溜め息は安堵なのか、残念なのかわからないけれど。
毎回、メールボックスを開くたび、祈るような、願うような、
何を祈って、
何を願って、
結局俺は、メールボックスを開く時、何を期待しているのだろう。
何を望んでいるのだろう。
メールが欲しくないわけじゃない。
でも、メールが欲しいわけでもない。
諦めているわけではない。
諦めてないわけでもない。
ただ、なんとなく。
メールボックスを開く刹那、何か、どこか、祈るような気持ちになっている。
そして「新着メール1件」という言葉に、何か、どこか、溜め息をつく。
その溜め息は安堵なのか、残念なのかわからないままだけれど。


昔。
メンバー皆でメアドの交換を初めてした時。
新しく手に入れたばかりの玩具みたいで、嬉しくて楽しくて。
つい、すぐそばにいるメンバーにメールを送ったりして遊んでいた。
手元で送信ボタンを押してすぐ、近くにいるメンバーが携帯から顔を上げてこちらを向いて、笑う。
すぐに視線はまた携帯に落ちて、ぎこちない動きでもってぽちぽちと返事を打って、送信ボタンを押して。
手のひらの上、携帯がメール着信を知らせて。
開いて、読んで。
顔を上げて、笑う。
そんな、くだらない遊びに夢中になってた頃がある。
あのさぁ、そういえばさぁ。
そう言って、話せば数秒で済むようなくだらない用事でも。
まだ、携帯の形も今と違っていたし、機能も全然少なかった頃のことだ。
だから、昔。



      *   *   *



もたれかかった背中に感じるのは、俺が力を抜いて全体重で後ろに倒れようとする力と同じくらいの、全体重でもってこちらにもたれかかる背中。
お互い容赦なくくつろぐからこそ、それができるほど相手を信用しているからこそ、俺も相手も、倒れずに心地よい角度を保っている。
じんわり。
背中に布越しの体温。
指先で弄ぶのは携帯電話。
それは背後の人も同じようで、あの頃とは全く違った手馴れた操作音がする。
完全に背中を向け合って、ぴたりとくっついて。
会話なし。
仲がいいのか悪いのか、微妙なとこ。
…には、見えないか。さすがにこんだけくっついてれば。
「いっそ向かい合えよ鬱陶しい」
心底面倒くさげにリーダーは言うけれど。
向かい合えばそれはそれで、うざい、と吐き捨てられるのも分かりきったこと。
だって何度も耳にしている言葉だから。
リーダーの溜め息を他所に、俺は慣れた手つきで携帯をぽちぽち。
『たまにはこうしてたりしないと。ねぇ?』
送信。
すぐ背後で彼の携帯が震え、短く俺専用着信音が鳴る。
その着信音が俺専用だってことは、彼と俺しか知らないのだけれど。
そして、彼がそれを読んで僅か肩を震わせたのが分かったから、無言のまま背中に僅か力を込めて同意を求める。
彼もまた同じようなことを考えていたのか、それとも俺の勘違いなのかわからないけれど、とりあえず、俺の背中を僅か同じ力で押し返して相槌のような反応をくれた。
以心伝心。…とか、思い上がらせておいてくれ。と無茶を思う。
思いながら、俺も背後の彼と同じように、慣れた手つきでまた携帯をぽちぽちする。
彼との会話、終了。

背中合わせの体温は心地いい。
確かに向かい合ってくっついててもいいんだけど、どうしたって丸まる俺の猫背が、俺よりはまだましだとしても、それなりに同じように猫背の彼の背中と接点を僅かにするのを嫌がって、無意識少しだけ伸びるのが分かった時、あぁ、こうするのも悪くないんだ、と知った。

不意に、携帯がメール着信を知らせる。
俺と彼しか知らない、俺の携帯の、彼専用着信音が短く流れる。
すぐに開かれるフォルダには、当然彼からのメールが一通。
『お前、眠いだろ』
唐突な言葉も、背中合わせだからこそ笑える。
きっと、彼に預ける安心感から、睡魔を感じ始めた俺の体温がほんの僅か上がったことを、ぴたり合わせた背中でもって彼に伝えてしまったのだろう。
うん、眠い。
そうメールの返信をするのも何だか面倒で、背中に少し、力を入れて相手を押す。
軽く押し返す背中に、また少し笑う。
べたり、背中を伸ばして身体全部で彼にもたれる。

会話したくないわけじゃない。
ただ、もったいない気がする。
こうして黙ったまま背中ごと体重を預けて、じわり、滲む体温みたいにこのまま、互いの身体の中に入っていけそうな気がするほどずっと。
…このまま、這入っていけたらいいのにと思ってしまうほどずっと。



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