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かげふみ

僕としては、最初から見返りを期待していたわけではないのだけれど。
いつの間にか欲張りになっていく自分に、不満というより不安なだけです。
好意や善意は時々、思いも寄らない、とてつもなく恐ろしいものを引きずり出してきてしまうんですね。

僕と君とがそれぞれに繰り返す“無償の愛”とやらはもしかして、夕暮れ時子供たちが繰り返す、かげふみ遊びのような無邪気さと、無意味さと、そして呪い地味た残酷さで構成されたものなのかもしれない。
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ひとつとや

たったひとりのアナタと、たったひとりの自分とで。

たったひとつのスプーンで分け合うことの楽しさや、

たったひとつの毛布に包まって寄り添い眠ることのあたたかさを知った。

たったひとりのアナタの指は、たったひとりの自分の指と噛み合うけれど。

たったひとつの僅かな隙間すら、自分たちには埋めきれなかった。

なにひとつ、自分たちにとってどうでもいいものなどないのだと、アナタは教えてくれました。

アナタがくれたものひとつとや、いらないものになんかならないよ。

酷く醜い甘い夢

あなたの夢を見ました。
もうずっと会えていないし、あなたとの繋がりの一切をとっくの昔になくしているので、生きているか否かすら分からないあなた。
夢で見たあなたは、あの頃のあなたでした。
今のあなたを知らない、私のエゴ丸出しの夢でした。

夢の中でも私は眠っていました。
いつもの布団の上、うつ伏せて転寝をしていました。
あなたは眠る私の枕元に足を崩して座ってしました。
「うつ伏せ寝って苦しくないの?」
あなたは苦笑します。
夢うつつにあなたのその声が聞こえました。
きっと、うつ伏せてしか完全に弛緩できない臆病な私に、苦笑したのだと思いました。
「うつ伏せは確かに苦しいけれど、これが一番安心して眠れる」
私は眠りながら、声には出せずに心の中であなたに答えます。
だけど、私の声などあなたに届かないことくらい、分かっていました。
あなたはあの頃のあなたのままで。
私だけ、今の私になっていたのですから。
もう私とあなたの間には、指折り数えるのも悲しくなるほどの時間という壁が隔たっていました。
声など届くはずがないのです。

あなたの夢を見ました。
あの頃のままのあなたが、眠る今の私の髪を撫でる夢を見ました。
私のエゴ丸出しの、酷く醜い、夢でした。

抱え込んだ膝の祈り

迷い込んだ蜘蛛の子は、この場所の意味を知らないでピコピコと辺りを見回している。
膝を抱えたままにしていた気だるい指でもって、お前の進むべき方向を指し示して見せてやろう。

可哀想に。
間違えてきてしまったのだね。
ここではお前は生きられない。
ここにはお前の自由はない。
だから出てお行き。
さぁ早く。

夜になる前に。
この扉がお前を閉じ込めてしまう前に。
この場所に充満している毒がお前を駄目にしてしまう前に。

まだ、お前なら間に合うのだから。

この力なき指先が、お前の生きるべき方向を指している。
それに従い生き延びなさい。

夜になって、この指がお前を殺してしまう前に。
さぁ早く。

いつの間にか、蜘蛛の子の姿は消えていた。

それでいい。
ぐらぐら揺れていた頼りない指を、膝に戻して目を閉じる。

この場所も、この指も、一切を忘れてお眠りなさい。
力強く生き延びなさい。

そう、呟いて。
何の感慨も残らない、どうでもいい夢を見る。

雨雲を呼んで

汚い嘘を積み重ねて、織り上げて、丁寧に。
光沢のある甘ったるい蜜のように練り上げて。
そうすれば、晴れの日だって曇りの日だって、嵐を待たずに済むのでしょう。

胸中渦巻く下心も、演技も、劣情も憎悪も悲哀も、ひたすら純度を保って。
優しすぎるほどの柔らかな繭の中に眠らせて。
そうすれば、蟷螂だって蝶だって、毒から逃れずに済むのでしょう。

いつか君が眠った時、僕は眠る君の前にへたり込んで、何から話そうか。
もしも僕が先に眠ったら、君は眠る僕の前に立ち尽くして、何から話してくれるかな。

燃えないゴミの日

ここに、ゴミ箱がある。

なんの変哲もない、ごくありふれたゴミ箱である。

このゴミ箱は、数週間の間、時間をかけて少しずつ不必要と判断されたものばかりでぎゅうぎゅうになり、数週間に一度空っぽになる。

不必要なものだけを抱え込むためだけに必要とされ、空っぽになったと思ったらまた新たに不必要なものを詰め込まれる。

ただそれだけのものである。


ここに、ゴミ箱がある。

何の変哲もない、ごく普通のゴミ箱である。

このゴミ箱にとって、不必要なものでいっぱいにされる状態と、空っぽになった状態の、どちらが自分の存在意義を噛み締めることができるのだろうと考える。

何の変哲もない、どこにでもありそうなゴミ箱。

何故、自分はここにいるのだろうと思ったことはないのだろうか。
己の内部を満たすそれらがある日突然なくなる日、このゴミ箱はそれらもろともここから姿を消す日がくることを待ち望んだりしないのだろうか。

上手にひとりで歩きましょう

何度繰り返しても、どうしても慣れないことがある。
それは、帰り際の君の背中を見送ることだ。

いつもいつも、君と会うたびそれと連動して必ずこの時がくることくらいは知っているから、その時折の衝動なんかで君を引き止めたって仕方がないことも分かっている。
だから僕は悪戯に引き止めて君を困らせたりもしないし、そんなことをして無駄に時間をずらしたりしない。
引き止めたって、どちらにせよこの時は必ずくるのだ。
ただ、帰っていく君に微笑み、手を振るだけだ。

だけど思う。
僕は君に、上手に微笑んで手を振れているだろうか。
君を、上手に見送れているだろうか。
妙に君の後ろ髪を引いていないだろうか。
君の心残りなんかにならずに済んでいるだろうか。

君は、上手に君の帰るべき場所に帰れるだろうか。
僕は、上手に僕の帰るべき場所に帰れるだろうか。

最後に握ったその手のひらの温度を感触を、次に会う時までの道しるべにして、僕らは上手にひとりで歩けるだろうか。

何度繰り返しても、どうしても慣れないことがある。
それは、帰り際君の背中を見送ることだ。

いつもいつも、必死で笑い君に手を振る僕に上手に笑って手を振り返し、背を向けて歩いていく君の背中を見送りながら、もしかしたらこのまま二度と君と会えないのではないか、と思ってしまう。
そのたび、そう思ったところでどうしようもない、と自分を戒める。
戒めたところで、この次君に会い、別れの時がきた時、また、同じようにもう二度と会えないのではないかと思ってしまうことも分かっている。
分かっているけれど。

僕らは上手にそれら不安を切り離し、それでもそれぞれの帰るべき場所に帰る。
帰らなければならない場所がある限り、僕らは下手でも上手でも、とにかく笑って手を振るしかない。
背を向けて、ひとりで歩くしかない。

最後に握ったその手のひらの温度を感触を、次に会う時までの道しるべにして、僕らはまた会えるのだろうか。

IMAGE

あとすこし。

その景色を、本来の視界ではなく、眼球の一歩手前、ごちゃごちゃ雑然と色々なものが詰め込まれた脳裏に見つけるたびに、あと少し。そう思う。

あと少しで分かりそうなんだ。
あと少しでこの手は届きそうなんだ。
あともう少しで、思い出せそうなんだ。
あとすこし、もうすこしで、見つけられそうなんだと。

だけどいつもそこに到達することはできずに、景色は意図も簡単に歪んで消える。

あぁ、あとすこしだったのに。

伸ばしたままの自分の指先を呆然と眺める。
その先、濃霧のように一歩先すら曖昧な世界。
無防備な手のひらを地面にぺたりと当て、探るその先にあるのは、罠か答えか。

あの景色。
あの風の温度と空の匂い。音も気配も何もかも。
覚えているのに。
忘れるはずもないのに。
すぐそこにあるような気がするのに。
無性に、切なくなるほどそばに。
だというのに、分からない届かない見つけられないのは何故か。

あとすこし。
あとすこしで、

星陵

朧げな記憶を必死で手繰ると、僅かに見えてくるものがある。

それは重ねるべきものを着実に重ねた彼の、最後に見た背中。

ぬらり滑り込むようにしてそれが巻き付いて、どうしたって解いてあげられなかったけれど。

彼は、壁に凭れ目を細めて、静かにタバコを吸うだけだった。

先端からくゆる煙は、青紫。

彼の口から吐き出されるそれは、濁った白。

その違いだけを、彼は最後に教えて消えた。

元々

元々いた場所と、気づいたらこんなに遠く離れてしまったけれど。
元々いた場所の詳しい住所も何も忘れてしまったから、もしかしたらそんなに変われていないのかもしれない、なんて時々思う。

帰りたいと思う場所はないよ。
ホームシックになんてなったことないよ。
変わらないでいたいなんて思った覚えもないよ。
変わりたいと言ったつもりもないよ。
だけどどこかで、還りたいと願う場所を見つけて、そこを酷く恋しがって、変わるものと変わらないものを並べて眺める日々を過ごしてる。

へとへとすぎて指一本僅かも動かせなくなるまで、もう少し一緒に笑っていてくださいな。

口から出任せ

時々、激痛より鈍痛の方が耐えられない、と思う。

酷い怪我をした時、傷口はそこにもうひとつ心臓が生まれたかのように、どくり、どくりと脈打つ。
痛みで理性が壊れてしまわぬよう、脳内麻薬が分泌され、痛みは酷い痺れと熱となって分からなくなってくれる。
もしくは、それでも追いつけない場合は意識を失う。
それだけだ。そして、それでよかった。

…なのに。

中途半端な打撃は、何故こんなに長く長く続くのだろう。
じわじわ、ちりちりとした痛み。
一体いつまで耐えればいいのかも分からない。
むしろ少しずつ降り積もる砂時計の砂のように、ただ見ただけでは分からないほど僅かずつ、増えていくような気がする。
ただ、顔を歪めるほどでもない、だけど笑うこともできない。
じりじり、着実に理性も肉体も攻撃する痛み。

こんなの、耐えられない、と思う。
あぁ、何より辛い拷問は、肉体的なものではなく、脳に働きかけるものだった、と思い出す。
じりじりと壊していくその緩やかさが、何よりの苦痛だと。

だから、なんて君からすればただの言い訳かもしれない。
この場から逃れる手段だと思われても仕方がないのかもしれない。

「こんなの耐え切れない」

僕は呟く。
いっそ意識を失うほどの激痛をくれたらいいのに、と。
君は、どうせ笑うだけで許してなんてくれないのだろうけれど。

じりじりと僕を追い詰める鈍痛を抱え、僕は途方に暮れる。
耐えられない、そう呟いて、だけどまだなんとか立っていられている。

あぁ、行かなくちゃ、と思う。
まだ君は許してくれない。
君が呼んでいる。
気づけないくらい少しずつ増す鈍痛をそのままに、それでも行かなくちゃ。
未だ僕を許してくれない君のところに。
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